大野和士(指揮) 東京都交響楽団

屈指の人気作で言祝ぐブルックナー・バースデー

左:大野和士 ©Rikimaru Hotta
右:ポール・ルイス ©Kaupo Kikkas

 東京都交響楽団は昨年から今年にかけて、今年生誕200年のブルックナーの主要な交響曲を取りあげている。指揮者はいずれも都響と共演を重ねてきた人ばかりで、それぞれに好評を得ているが、なかでも音楽監督の大野和士と4月に演奏した交響曲第3番は、両者の信頼関係が音に出た、堂々と力強い、見事な演奏だった。がっしりと安定感があり、波動のようなエネルギーをつくりだす弦楽セクション。厚みと輝かしさをあわせもつ金管。ハーモニーに奥行きを与え、美しく歌う木管。力強いリズムをもたらすティンパニ。こうした都響の楽員たちの高いポテンシャルを引き出してみせた大野のバトンの冴えは、終演後の熱く長い大喝采にふさわしいものだった。

 この大野と都響の名コンビが、今度は9月のブルックナーの誕生日とその翌日に、交響曲第7番を取りあげる。リズムを刻む音型で第1楽章を始めることが多かったブルックナーが、この作品ではメロディを長く歌わせて、雄大に開始させる。これによって、巨大な第8番や第9番へとつながる新境地をひらいたと大野が評価するこの曲で、都響はどんな深いハーモニーを聴かせてくれるだろうか。

 コンサートの前半には、ポール・ルイスを独奏とするベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番が演奏される。ブレンデルの愛弟子ルイスは近年ますます充実度を増しているだけに、豊かで中身の濃い音楽が響くはずだ。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2024年8月号より)

第1007回 定期演奏会Aシリーズ
2024.9/4(水)19:00 東京文化会館
第1008回 定期演奏会Cシリーズ
9/5(木)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド0570-056-057
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