牛田智大(ピアノ) 協奏曲の夕べ モーツァルト&シューマンの心を謳う

オーケストラと対峙し、さらなる進化をみせる

牛田智大 ©Ariga Terasawa

 12歳でデビューし、今年が活動13年目となるピアニスト牛田智大。ショパンやラフマニノフといったコンポーザー=ピアニストたちの華麗なる独奏曲で聴衆を魅了してきた牛田だが、最近では弦楽器とのデュオや五重奏とアンサンブルにも精力的に取り組み、室内楽というフィールドでも目覚ましい活躍を遂げている。そのレパートリーも多岐にわたり、ショパンやブラームスをはじめとするロマン派の作品から、ショスタコーヴィチやグバイドゥーリナといった近現代のロシア作品に至るまで、多彩な演目を取り上げている。真摯に深く作品解釈を行う牛田が、このように合奏の探究を続けていることは、音楽家として次なる段階へと突き進んでいることを意味している。

 そんな牛田が、一夜で2つのピアノ協奏曲を披露する公演が9月3日に開催される。曲目は、牛田が最近とくに力を入れて、ソロ・リサイタルでも作品を取り上げているモーツァルトとシューマンだ。モーツァルトのピアノ協奏曲第20番ニ短調は、明るい曲調が一般的であった当時の協奏曲の風習に一石を投じた、悲哀を滲ませる傑作で、シューマンの協奏曲はドイツ・ロマン派らしい情熱とスケールの大きさを感じられる人気曲である。共演は飯森範親の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。冒頭にはモーツァルトのコンパクトで晴朗な交響曲第9番も演奏される。牛田の包容力、牽引力をもったピアニズムを実感できる、充実の一夜となりそうだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年8月号より)

2024.9/3(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
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