神奈川県立音楽堂 開館70周年記念事業ラインアップ 記者発表

左:沼野雄司 右:吉野直子 撮影:大野隆介

 1954年にオープンした神奈川県立音楽堂が今年、開館70周年を迎える。これに伴い同音楽堂は、今年度のキャッチフレーズを「音が歴史を刻んで70年」とし、10月31日から開館記念日の11月4日をフィナーレとする記念事業「開館70周年記念週間」を開催する。
 5月28日、記者発表が行われ、音楽学者で音楽堂芸術参与の沼野雄司、11月4日の「開館70周年記念ガラコンサート」に出演するハーピストの吉野直子らが登壇した。

 会見で沼野は、日本初の本格的な音楽ホールとして誕生した神奈川県立音楽堂をあらためて紹介した。
「70周年についての会議でスタッフと音楽堂のイメージを話し合った時、幼い頃から通っている方が“クラシック音楽の殿堂”と仰いました。実はそれを伺った時には少し違和感があったのですが、音楽堂の歴史を振り返ってみると、往年の名ソプラノ、シュヴァルツコップやヴァイオリンのオイストラフの他、ヘルマン・プライ、リヒテル、アルゲリッチ…と超一流のスターがここで公演を行っています。そのことを聞いて納得しました」

 開館当時、「東洋一の響き」と言われた音響については、「1980年代後半以降に誕生したホールの多くはよく響く。それに対してこのホールは残響が少なく、音が非常にクリアでシャープです。そのため聴く側は演奏に集中しやすく、細部まで聴きとることができる。私にとって、ピアノを聴くにはこのホールが日本で一番好きだと言っても嘘ではないほど、本当に美しい音を聴くことができるホールだと思います」と魅力を語った。

 吉野は「開館70周年記念ガラコンサート 紅葉坂の四季」で、ジョン・ケージ、ドビュッシー、武満徹の他、神奈川県出身の川上統の新曲を披露する。

「このホールにはじめて出演させていただいたのは1986年でした。客席を近くに感じる親密さや、内装に用いられた木のぬくもりが印象に残っています。

 ケージの『ある風景の中で』は、このホールに深く携わってこられた一柳慧さん(2000~22年 神奈川芸術文化財団芸術総監督)を思って選曲しました。世界の最先端の音楽家たちと関わっていらした一柳さんに思いを馳せ、彼が大きな影響を受けた作曲家ジョン・ケージを取り上げることにしました。

 川上さんの作品は相模湾の珊瑚を描いた『八放(はっぽう)珊瑚八節』。以前『櫛海月(くしくらげ)』という川上さんの作品を演奏したことがありますが、今回は珊瑚。前回とは違ったイマジネーションが生まれそうで楽しみです。ハープにとって貴重なレパートリーが誕生することを本当に嬉しく思います」

 「開館70周年記念週間」はガラコンサートの他、音楽堂の音響をお話とミニコンサートで体験する「音楽堂建築見学会」(11/2)、0歳から入場可能で、楽器づくりにトーク付きの演奏が楽しめる「音楽堂ファミリーデー」(11/3)、開館時から主催、貸館に関わらずすべての公演分を保管しているというプログラムや、ポスター、チラシ、記録写真、アーティストのサインなどを展示する「開館70周年記念アーカイブ展」(10/31~11/4)など、音楽堂の魅力を味わい尽くす1週間となる。

記者発表当日、ロビーに並べられた過去の公演のポスター
偉大な音楽家たちの名前がズラリ

神奈川県立音楽堂 開館70周年記念週間

開館70周年記念ガラコンサート「紅葉坂の四季」

2024.11/4(月・休)15:00

出演
吉野直子(ハープ)
神尾真由子(ヴァイオリン)
小林道夫、大塚直哉(以上チェンバロ)
上野星矢(フルート)
中恵菜(ヴィオラ)
中山美紀(ソプラノ)
神田佳子(打楽器)
開館70周年記念アンサンブル 

曲目
ジョン・ケージ:ある風景の中で
川上統:八放珊瑚八節(神奈川県立音楽堂委嘱作品/世界初演)
ヴィヴァルディ:四季(ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」op.8より)ほか 

音楽堂建築見学会

11/2(土)
見学会 13:00
講演会・ミニコンサート 14:00

出演
礒絵里子(ヴァイオリン)
中川賢一(ピアノ)
石渡智秋(永田音響設計)

音楽堂ファミリーデー

11/3(日・祝)

開館70周年記念アーカイブ展

10/31(木)~11/4(月・休)

神奈川県立音楽堂 開館70周年記念特設サイト
https://www.kanagawa-ongakudo.com/70th