実力者たちの演奏&トークで楽しむバレエ音楽
ピアニストの金子三勇士が、「弾む♪ ワルツ 〜名曲バレエ音楽の世界〜」と題して、ヴァイオリニストの米元響子、チェリストの上村文乃とともにコンサートを行う。トークゲストに東京バレエ団プリンシパルの柄本弾を迎え、バレエ音楽を様々な形で紹介していくという。
金子は「踊りは、多くの音楽作品の原点。原始の時代からある表現の方法でありコミュニケーションツールですし、舞曲と題されていなくても明らかにこのリズムは踊りだという曲もあります。僕は有難いことに、バレエダンサーの皆さんが踊る舞台上あるいは舞台袖で生演奏する機会が何度かあったのですが、その体験がただ頭の中でイメージして弾いていたものといかに違ったかというのは大きな発見で、曲の解釈にも変化がありました。なので、それをお客様に体験してほしいと思いましたし、ダンサーの方と本音のトークをしてみたいなと考えていたんです」と企画の発端を語る。一方、柄本は「バレエ自体、基本的には音・音楽があって初めて成り立つもの。日々のレッスンもピアノで行われますし、ダンサー同士で動きを揃えることも、お客様の前に立つことも、音楽なしではできませんから」と、切っても切れないバレエと音楽の関係を強調する。
ドビュッシーの名曲を色々な角度から
コンサートでは様々な曲を、選曲理由や具体的なエピソードも披露しながら演奏予定。例えばドビュッシー作曲「月の光」は、金子にとっても柄本にとっても思い入れのある曲だ。
「『月の光』は自分にとって、バレエダンサーとのコラボレーション体験の中ですごく印象深い作品。今回はヴァイオリンバージョンとチェロバージョンを演奏します。編成が変わることによって全体像が変わることを、お客様にも楽しんでいただけたら嬉しいです」と金子。柄本が最近主演した金森穣振付『かぐや姫』でも、この曲は効果的に使われていた。柄本は言う。
「『かぐや姫』では1幕で『月の光』のピアノ版、2幕で同じ曲のオーケストラ版を使って、かぐや姫とのパ・ド・ドゥを踊ったんです。同じ曲をそういう形で使うというのは、バレエではそうあることではないですし、テンポ感も少し違っていたので、慣れるまでは違和感もありました。今回、その『月の光』を2バージョン聴けるのは楽しみですが、バレエでは1曲の中で悲しかったり幸せだったりと感情の起伏が激しかったので、会場の端でちょっと情緒不安定になってしまっているかもしれません(笑)」
今だからできるコラボレーション
実は誕生日が4日違いの同い年である二人。それぞれのルーツである「関西」(柄本)と「ハンガリー」(金子)のノリは近いそうで、対談中も和気あいあいとした雰囲気。ともに30代。経験を重ねた今だからこそのトークが聞けるに違いない。
「10代の頃はまだ自分のことに必死で、他に目を向ける余裕もなかった気がしますけれども、この年齢になったからこそ他の分野への視線・視点が湧いたというのは絶対にありますし、同世代だから話しやすいというのは間違いなくありそうです。世界観がどこか通じ合えるからこそ出会える新たな世界というのはあるのではないかと思いますね」(金子)
「同感です。僕も10代の頃は、初めての作品、初めての振付家が多く、それ以外のことに目を向ける余裕は全然ありませんでしたが、年齢とともに少しずつ、他のジャンルや人に目が行くようになりました。とはいえ演奏家の方とは普段、テンポの話くらいしかしないので、今回は自分が一番の特等席で音楽について聞けることを楽しみにしているところです!」(柄本)
取材・文:高橋彩子
(ぶらあぼ2024年6月号より)
アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2024-2025
金子三勇士の「弾む♪ ワルツ」 ~名曲バレエ音楽の世界~
2024.8/8(木)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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