荒井里桜(ヴァイオリン) & 東 亮汰(ヴァイオリン) & 田畑音葉(ヴィオラ) & 北村 陽(チェロ)

同世代の音楽家との出会いに刺激を受けて

上段左:荒井里桜 上段右:東 亮汰 ©井村重人
下段左:田畑音葉 下段右:北村 陽

 長年にわたり若い音楽家たちを支援し続けてきたローム ミュージック ファンデーション。幅広いアーティストを対象にした奨学援助の制度は、国内外での学びと経験の場を支援する貴重なもの。その奨学生たちが集うコンサートが、7月と8月に京都と東京で開催(ライブ配信も実施)。今年のテーマは「輝き〜音とともに〜」。8月25日の京都公演でラヴェルの弦楽四重奏曲(第1・第2楽章)を演奏する、荒井里桜、東亮汰(以上ヴァイオリン)、田畑音葉(ヴィオラ)、北村陽(チェロ)の4名に話をきいた。奨学生として、ベルリン芸術大学(北村)、ローザンヌ高等音楽院・ブリュッセル王立音楽院・エリザベート王妃音楽院(荒井)、英国王立音楽大学大学院(田畑)に留学したり、国内での多彩な活動を深める(東)など、この制度を活用し、ソリストとして大活躍中の彼らの組み合わせは興味深い。

田畑「今回のテーマ『輝き』に際し、ラヴェルのカルテットを弾きたいと考え、まずぜひ荒井さんとご一緒したい! と思ってお誘いしました。それから話し合いながらこのメンバーに声をかけました」

 ほかの3人も「田畑さんに声をかけていただき、嬉しいお誘いで楽しみです」と声をそろえる。その田畑のイメージ通り、「輝き」という公演テーマとラヴェルの弦楽四重奏曲の相性はよさそうだ。

田畑「ラヴェルが28歳、自らの道を切り開いていた頃に書かれた曲で、ハーモニーやパートの混じり合いが独特です。水面にあたる光のようにキラキラ輝いている印象があり、光と影、そして希望にあふれていると思います」

北村「私はラヴェルのカルテットを初めて聴いた時、感動のあまり大泣きしたことを覚えています。意外な展開を見せる色彩豊かな和声は、輝く未知の世界へ導かれるようです」

「この曲はこれまで10回以上は演奏機会があり、弦楽四重奏曲の中でも特に思い入れ深い曲のひとつです。幻想的でオリエンタルな色彩感が、弦楽四重奏ならではの響きによってより色濃く感じられる、特別な作品だと思います」

荒井「ラヴェル独特の和声から感じられる光の当たり具合や空気の香りなど、ぜひ注目して聴いていただけたらと思います」

 ロームのスカラシップ コンサートは5日間にわたって開催され、多くの演奏家たちが参加し、各自が複数の曲を演奏する。4人とも「同世代の素晴らしい音楽家と会えて、共に演奏ができること」の喜びと意気込みを語る。

「大きな刺激をいただいています。広がったこの音楽の輪が、何十年後かにも繋がっていたら嬉しく思います。とても楽しみにしています」

田畑「音楽を共有することで、多くのインスピレーションと刺激を受け、今後にも大きく影響を与えてくれる経験になると思います。喜びやドラマに溢れる美しい音楽を共有できることが楽しみです」

北村「スカラシップ コンサートの出演は初めてです。さまざまな環境で学ぶメンバーとの室内楽で、解釈の違いや新しい発想、別の角度からの視点があると思います。心を大きく揺さぶられたラヴェルを演奏できることを、とても幸せに思います。メンバーとお客様とともに、再びあの感動を共有したいです」

荒井「皆さんのご活躍は存じているものの、なかなかお会いできる機会がないので、ここで交流して、意見を交換したりできるのは良い刺激になります。聴きに来ていただいた方には120%楽しんでいただけるよう、音楽と仲間と真摯に向き合い、良い時間をお届けしたいと思います」
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年6月号より)

ローム ミュージック ファンデーション スカラシップ コンサート
“輝き〜音とともに〜”【配信あり】
【Vol.47】7/27(土)

【Vol.48】7/28(日)(完売)
【Vol.50】8/25(日)(完売)
各日14:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ

【Vol.49】8/11(日) (完売)
【Vol.51】8/31(土)(完売)
各日15:00 浜離宮朝日ホール
問:otonowa 075-252-8255(京都) 1002(イチマルマルニ) 03-3264-0244(東京)
https://www.rmf.or.jp/jp/lp/scholarship_2024/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。