今年も春を呼ぶ指揮者がやってくる
指揮者ジャン=クリストフ・スピノジは“春を告げるひと”、私は勝手にそう思っている。
2010年に新日本フィルの指揮台に初登場してハイドンの交響曲「雌鳥」や「熊」の生気あふれる演奏を聴かせてくれたのは6月、初夏の時期のことだったが、その次の登場は2年後の3月で、ここから新日本フィルに“春の到来をつげる指揮者”としての活躍が始まった。
このときはバロック音楽を得意とするピリオド系の指揮者、というイメージを軽やかに裏切って、ドヴォルザークの「新世界より」を躍動的に聴かせた。以前の日本では年末に「第九」で新年が「新世界より」という演奏会がよくあったが、この曲は寒い1月よりも花が芽吹く春にこそふさわしいと、教えてくれるような演奏だった。
昨年は2月の末。お国もののフランス音楽から、ビゼーの《カルメン》の合唱つき抜粋とラヴェルにドビュッシーを聴かせた。《カルメン》では会場のサントリーホールがまるでスペインの街角に変身。生き生きとさんざめく群衆の豊かな表情も素晴らしく、ドラマに対するスピノジの鋭敏なセンスを実感させたものだった。そして不思議にも、この日から陽気はどんどん春めいていった。
さて今回のプログラムはロッシーニの《チェネレントラ》序曲、シューベルトの交響曲第3番、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」。19世紀前半の前二者はいかにもスピノジ向きだし、サン=サーンスの壮大な「オルガン付」(オルガン:松居直美)ではどんな響きを聴かせるのか、胸が躍る。今度もきっと、春を告げてくれるはずだ。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)
#535 定期演奏会
2/20(金)19:15 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp