井上道義(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

直感的に“わかる”現代音楽名作集

井上道義 ©加納典明
井上道義 ©加納典明
 かねて病気療養中だった井上道義が、秋口から元気に活動を再開している。1月には付き合いの深い新日本フィルハーモニー交響楽団の定期に登場。現代音楽だけで勝負するという選曲に、「新日本フィルでやったら面白いと思うプログラムを選んだんですよ。これで失敗したら俺も新日本フィルも、もうやめるから」ときっぱり言い切る。
 井上が自信をもって贈るのは、前衛音楽が熱かった1960年代に相次いで書かれた“アヴァンギャルドの古典”といってもいい名作集だ。まず武満徹の「地平線のドーリア」(1966)。舞台上に特殊配置されたオーケストラのなかから、アルカイックなメロディー(のようなもの)が点描風に浮き上がる。リゲティの「ロンターノ」(1967)では、かなたから現れた小さな音が次第に膨れ上がったかと思えば、再び耳をそばだてさせるかすかな響きになり…。たっぷりとしたサウンドの変化が、悠久の時間・広大な空間の無限性・神秘性を象徴的に表現する。井上が「騒音です、だけど音楽です」と語る「ノモス・ガンマ」(1968)は、建築家でもあったクセナキスが高度な数学を用いて作曲したものだが、そこで炸裂するエネルギーは凄まじいもので、聴き手を圧倒すること間違いない。
 選曲の意図は明瞭だ。一見とっつきにくいけれど、ライヴで接すればどれも直感的に“わかる”音楽なのだ。難しい理屈はさておいて、まず体験してみること。だからこそ固定ファンが聴きにくる定期で演奏する意味がある。現代音楽は難しいと思っている人ほど、チャレンジしてほしい。井上が四肢をいっぱいに広げた伸びやかな指揮ぶりで手招きする先に、あなたがまだ知らない快楽の世界が待っているかもしれないのだから。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

#534 定期演奏会
2015.1/29(木)19:15 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス 03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp