ピアノ協奏曲を反田恭平&JNOが披露
横浜みなとみらいホールの開館25周年を記念し、3月19日から24日まで音楽祭が開催される。同ホール「プロデューサー in レジデンス」第2代プロデューサーの反田恭平による企画で、3月23日の「反田恭平 ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO) 新曲演奏会」では前館長でもある作曲家の池辺晋一郎が作曲したピアノ協奏曲IV《草が語ったこと》を反田&JNOが世界初演する。これに先駆け2月26日、都内でメディア向けの取材会が行われ、池辺が出席した。
この作品を委嘱した反田のことを池辺は「もっとも瞠目しているピアニストのひとり」と評した。
「近年、日本から若く素晴らしい音楽家の登場が続いているが、彼はその中でも中心的な存在。ロシアで学んだ人で、ロシアやポーランドの音楽を意識していると思う。華やかさだけではない、地の底にあるものを表現するような音楽を感じます。指揮をはじめとした多彩な活動をしていることもよく知っています」
今回初演される作品は、21年12月ごろに反田本人から依頼があり、2年後の23年12月に書き上げられた。”弾き振りのための”ピアノ協奏曲というオーダーだったという。
「反田さんが第2位に入賞した21年のショパン・コンクールで、彼は『ラルゴ』を弾いていましたね。彼の感性の中に、こういう曲を愛でる心があると感じたことが印象に残っていて、本作の緩徐楽章に相当する部分でそれを意識しました。急-緩-急の三つの部分からなる作品です。演奏の合間にオーケストラに指示を出すことも想定して作曲しました」
この曲のサブタイトルは、池辺が2013年のシンフォニーIX以降触発され続けているという長田弘の詩集から「草が語ったこと」がとられた。
「15年に長田さんが亡くなってから、僕の中で彼の存在がどんどん大きくなっています。『草が語ったこと』は作品に引用したいと長く思っていた詩。今回のためにわざわざ探したのではなく、ごく自然にアプローチしました。詩の世界を描写したり、音楽的に影響を受けたりしたわけでもありませんが、作曲姿勢に影響を受けています。そして、あらかじめ何かを設定して、その設定に従って作曲するという方法を一切除外しました。ある意味では五線紙の上のインプロヴィゼーション(即興)です。できるだけ詩の世界に私の心境を近づけた結果そうなりました」
この作曲姿勢には反田からの言葉も影響しているという。
「『完全な無調や、前衛的なものではない方がいい』と彼は言っていました。完全な無調にするには、そのためのシステムを使わないとそうはならない。彼の言葉もあって、今回は特定の作曲技法を使わず、自然な成り行きを重視しました」
2007年から20年まで同ホールの館長を務めた池辺。
「横浜みなとみらいホールはとても良いホール。ヒラリー・ハーン、パーヴォ・ヤルヴィといった優れた音楽家も大事にしてくれている」
演奏家からも愛される横浜みなとみらいホールで、ゆかりのアーティストにより産み落とされる新しい作品。反田とJNOが描く現代の巨匠の世界観を体感したい。
【Information】
横浜みなとみらいホール25周年音楽祭
反田恭平 ジャパン・ナショナル・オーケストラ 新曲演奏会
2024.3/23(土)16:00 横浜みなとみらいホール
出演/
指揮・ピアノ:反田恭平
ジャパン・ナショナル・オーケストラ
曲目/
池辺晋一郎:ピアノ協奏曲IV《草が語ったこと》(委嘱作品 世界初演)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68
料金 /
全席指定
S:9,000円
A:6,000円
学生・障がい者手帳等をお持ちの方:4,000円
未就学児入場不可
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
https://yokohama-minatomiraihall.jp
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。