ドイツ音楽の巨匠がいま改めて問うシューベルトとブラームス
このところ毎年のように来日し、N響を振ってオペラにシンフォニーにとドイツ音楽の精髄を伝える伝道師、マレク・ヤノフスキ。オーケストラから輪郭のはっきりとしたサウンド、引き締まった流れを引き出してくることにかけては定評がある。1939年生まれの戦前派だが、長老と呼ばれる年代に達しても、そのタクトから紡ぎ出される音楽はいささかも緩みがない。
さて、今年もマエストロは3月に来日。東京・春・音楽祭でN響と《トリスタンとイゾルデ》をはじめとするワーグナーを披露した後、4月のA定期にもシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」とブラームスの交響曲第1番というベートーヴェン後のドイツ・シンフォニーの系譜を描くプログラムを引っ提げて登場する。
N響とヤノフスキの協働は1985年にまでさかのぼる。今からみると少し意外だが、当時のプログラムは今日のようにドイツもの一辺倒というのではなく、ロシアものやフランスもの、現代曲とかなり広範にわたっていた。もともとドイツ各地を遍歴した叩き上げタイプの指揮者であり、“ドイツ音楽のプロフェッショナル”という現在の日本での評判は、東京春祭でワーグナーを取り上げるようになってから定着したものだ。
シューベルトは一昨年の「グレイト」の緻密な表現が話題を呼んだのが記憶に新しいが、これも意外なことにN響とのブラームスの交響曲は1998年に2番を取り上げた以外には記録がない。ワーグナーのオペラやベートーヴェンの交響曲の次に、ぜひとも聴いておかねばならないのが今回のブラ1ということになるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年3月号より)
第2007回 定期公演 Aプログラム
2024.4/13(土)18:00、4/14(日)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp