2025-26シーズンのプログラムを発表
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は11月18日、東京オペラシティ コンサートホールにて記者会見を行い、楽団創立50周年となる2025-2026シーズンのラインナップ(25年4月〜26年3月)を発表。会見には常任指揮者の高関健、首席客演指揮者の藤岡幸夫、コンサートマスターの戸澤哲夫らが出席した。
新シーズンは、東京オペラシティ コンサートホールを会場とした定期演奏会(全6公演)とティアラこうとう定期演奏会(全4公演)に加え、創立50周年記念特別演奏会(サントリーホール/全2公演)を開催する。
まず目玉となるのは高関が指揮する演奏会形式でのオペラ上演。好評を博した昨シーズンの《トスカ》に続き、新シーズンでは9月の第381回定期でヴェルディ《ドン・カルロ》を上演する。かつてカラヤンのアシスタントを務めた経験をもつ高関。この作品もカラヤンの指揮で体験したという。
「ベルリンに留学していた頃、カラヤンが振る《ドン・カルロ》を聴いて、作品の素晴らしさに心の底から驚きました。その時受けた強烈な印象は今でもはっきりと憶えています。前回の《トスカ》で共演したみなさんとまたご一緒できるのが楽しみですし、音楽に集中していただける演奏会形式でのオペラ上演は今後も続けていきたいです」
他にもストラヴィンスキーの「春の祭典」(25.4/5)やメシアンのトゥーランガリラ交響曲(25.11/8)といった大編成の作品でタクトをとる。
「メシアンはどちらかというと自分からは縁遠い作曲家と思っていましたが、2012年に初めて『トゥーランガリラ交響曲』を指揮し、その時にこれほど面白い作品はないと気づきました」
ソリストには12年と同じ原田節(オンド・マルトノ)と児玉桃(ピアノ)を迎える。
また、高関は2026年2月と3月の50周年記念特別演奏会にも登場。曲目はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」(26.2/11)と第2番「復活」(26.3/31)。国際マーラー協会出版の「新全集」校訂に関わった経験もあり、録音も多数残している。
「第2番は留学時代、クーベリックが指揮するバイエルン放送響の壮絶な演奏を聴いて衝撃を受けました。そんな体験を皆様にもお届けしたいです」
東京シティ・フィルともすでにマーラー作品を複数演奏しているが、交響曲第6番と第2番は今回が初めて。緻密な楽曲分析で知られる高関がこれらの大作をどのように描くのか注目だ。
英国音楽および邦人作品の紹介に力を注ぐ藤岡は、ヴォーン・ウィリアムズのカンタータ「我らに平和を与えたまえ」(25.6/16)、若手作曲家・林そよかのヴァイオリン協奏曲(独奏:木嶋真優 9/13)などを取り上げる。
「日本で演奏機会が多い英国の作曲家といえば、エルガーやブリテン、ホルストのイメージですが、現地ではヴォーン・ウィリアムズを取り上げることが多いです。このカンタータの人気もとても高く、ぜひ日本でも紹介したいと思い選曲しました。林さんのヴァイオリン協奏曲は今年4月に関西フィルで世界初演をしましたが、素晴らしい作品です。木嶋さんもこの曲をとても気に入っていて、初演時には完璧に演奏をされていました。すでに関西では林さんの作品を多数指揮していますが、ぜひ東京でもと思い今回ご紹介します」
客演では古楽の巨匠で、東京シティ・フィルとの共演も多い鈴木秀美(25.10/18)や、2025年4月より大阪フィルの指揮者に就任することが決まり、今後の活躍が益々期待される新鋭・松本宗利音(25.7/3)らが登場。松本は、東京シティ・フィル指揮研究員時代に、当時桂冠名誉指揮者を務めていた飯守泰次郎より直接指導も受けたというブラームスの交響曲第2番を披露する。
ソリスト陣は来年デビュー50周年を迎えるヴァイオリンの大谷康子(25.4/5)がメンデルスゾーンの協奏曲、気鋭のピアニスト務川慧悟が生誕150年のラヴェル・プログラムに出演(25.10/4)し、2つの協奏曲を演奏するなど豪華な顔ぶれがが並ぶ。
2025年は楽団の創立50周年に加え、戸澤がコンサートマスターに就任してから30周年の節目でもある。6月の第379回定期ではベートーヴェンの協奏曲のソリストを務める。
「東京シティ・フィルの音楽、音づくりの基本は飯守先生の時代に大きく培われてきたと思っています。私はこの30年、全員が自発的にアンサンブルをして演奏することに最もこだわってきました。ベートーヴェンの協奏曲では、若いメンバーも増え、上昇気流に乗っているオーケストラとこの曲の真髄を究めたいです」
50周年を迎え、さらなる進化を見据える東京シティ・フィルに期待したい。
取材・文:編集部
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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