京都市交響楽団は11月15日、2025-26シーズン(25年4月~26年3月)のラインナップを発表した。今年4月、首席客演指揮者にヤン・ヴィレム・デ・フリーントが就任した同楽団。常任指揮者・沖澤のどかとの協働も3年目に入り、シェフとの絆を深めていくシーズンに掲げたテーマは「王道! 斬新!」。2026年に創立70周年を迎える京響の歴史の中であまり取り上げられなかった“王道”の作品に光をあて、それらを“斬新”な切り口や組み合わせで取り上げていくという。
沖澤は定期演奏会に3回登場。25年6月の公演では、世界トップクラスの楽団と共演を重ねるヴァイオリニスト、アラベラ・美歩・シュタインバッハーを迎え、彼女のために作曲されたジョルジュ・レンツの協奏曲(2023年)を日本初演する。カップリングは、同年生誕150年・ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」をはじめとする珠玉のフランス音楽集(6/20, 6/21)。
9月には、ショパンと同時代の女性作曲家、ルイーズ・ファランクの交響曲第3番と、リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」を披露。同楽団の特別客演コンサートマスターで、「石田組」の活動で大きな話題を呼んでいる石田泰尚がヴァイオリン・ソロを担う(9/19, 9/20)。サントリーホールで開催される東京公演でもこのプログラムが演奏される(9/23)。
そして、シーズン最後の26年3月は、待望のオペラ公演、モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》(演奏会形式)。同郷の盟友・隠岐彩夏(フィオルディリージ)をはじめ、山下裕賀(ドラベッラ)、糸賀修平(フェランド)、大西宇宙(グリエルモ)ら今を時めく実力派の歌い手が集結する(26.3/20)。定期以外でも、子どものための入門シリーズ「オーケストラ・ディスカバリー」に2回出演(12/21&26.3/29)、名古屋公演(25.6/26)、大阪特別公演(6/29)、第九コンサート(12/27, 12/28)でもタクトをとるなど、まさに「楽団の顔」として大活躍の一年になりそうだ。
デ・フリーントの定期出演は2回。8月公演は、ベルリン・フィル定期(25.3月)への出演で注目が高まる13歳のヴァイオリニスト・HIMARIと、ドヴォルザーク「ロマンス」とヴィエニャフスキ「ファウスト幻想曲」で共演する。後半は、盤石の独唱陣(ソプラノ:石橋栄実、メゾソプラノ:中島郁子、テノール:清水徹太郎、バスバリトン:平野和)を迎えてのモーツァルト「レクイエム」(8/29, 8/30)。
26年2月はシューベルト・第4番「悲劇的」とブルックナー・第3番(初稿/1873年)の交響曲2曲プロ。後者は、京響としては1962年、ハンス・ヨアヒム・カウフマン(第2代常任指揮者)の指揮で日本初演を行って以来、2度目の演奏になるという(26.2/13, 2/14)。
桂冠指揮者の大友直人はシーズンの幕開けとなるスプリング・コンサートでタクトをとり、ドヴォルザークのチェロ協奏曲(独奏:鳥羽咲音)&交響曲第9番「新世界から」、2つの名曲で魅せる(4/13)。2008年4月から22年3月まで常任指揮者を務め、現在も楽団と深いつながりを持つ広上淳一は26年1月定期に登壇し、バーンスタイン「スラヴァ!」、コープランドの交響曲第3番とアメリカン・プログラムを披露。間に挟まれるバルトークのピアノ協奏曲第3番では、貫徹した音楽哲学で人気を集める三浦謙司がこの難曲にどうアプローチするのか、期待が高まる(26.1/23, 1/24)。
昨年3月まで3シーズンにわたり首席客演指揮者を務めたジョン・アクセルロッド。4月に待望の再登場を果たし、日本を代表するソプラノ・森麻季の独唱で、R.シュトラウス晩年の最高傑作「4つの最後の歌」を取り上げる(4/19)。オーボエ演奏・指揮・作曲それぞれの領域で傑出した才能をしめす大家、ハインツ・ホリガーの自作自演(マエストロ自らのピアノ独奏も!)(5/17)や、欧州の歌劇場で活躍するフランスの俊英、ピエール・デュムソーと人気サクソフォン奏者・上野耕平のトマジ「バラード」での共演(10/11)……など、客演陣も聴き逃せない公演ぞろい。70周年という節目を目前に、京響らしいこだわりのプログラムが咲き溢れる、充実のシーズンとなりそうだ。
文:編集部