川瀬賢太郎(指揮、名古屋フィルハーモニー交響楽団音楽監督)

東京でのお披露目公演はとっておきのプログラムで

取材・文:山崎浩太郎

——2023年4月から音楽監督となられましたが、11年から指揮者、19年から正指揮者と、名古屋フィルとは途切れることなく共演されてきたのですね。

 2008年に、定期演奏会の3日間のリハーサルのうちの1日だけを担当したのが最初で、それから本番に呼んでもらうようになったのですが、名古屋フィルは若い指揮者に厳しいと聞いていたので戦々恐々としていました。

 それなのに、うちの指揮者になりませんかと言われたので、え、なんで? と正直思いました(笑)。勇気を持ってお引き受けしたのが2011年、僕が25歳ぐらいの、デビューから3年後か4年後の時期です。それからは温かいおつき合いになり、楽員の皆さんのことをよく知るようになると、ただ怖いのではなく、とても愛にあふれている人たちだとわかりました。厳しくも愛を持って、根気強く僕を育ててくれた、音楽的な父母のようなオーケストラです。

——その音楽監督となられた。

 タイトルは変わっても、音楽をする上でのスタンスは変わりません。今までの延長線上で、お互いに切磋琢磨していきます。

——名古屋フィルの魅力はどんなところでしょうか。

 とてもアットホームです。そして、昨年亡くなられた外山雄三さん時代からの伝統で、楽譜をちゃんと読んで、書いてあることをきっちりやるというスピリットを、今もなおすごく大事にしているオーケストラだと、指揮しながらあらためて感じました。

——3月の東京公演には、レスピーギのローマ三部作を選ばれました。

 ローマ三部作は、2015年に神奈川フィルと演奏して以来なんです。CDにもなった演奏ですが、オーケストラも僕も「ゾーンに入った」感じで、聴衆との一体感をあそこまで背中で感じた演奏会は、その前にも後にもありません。あの特別な体験の思い出は超えられないだろうと思って、大好きな作品ですが、寝かせてきたんです。

 でもこれだけ名古屋フィルと長い関係を続けてきたので、その時が来たなと思い、取り上げることにしました。

 今からすごく緊張していますが、バンダもオルガンも入って、ホール全体が楽器となるような作品ですから、自分たちのホームの会場以外で、オーケストラの楽器を最大限に使った演奏をするのは、名古屋フィルがこれからステップアップする上で、とてもいい経験になると思います。

 それから今回は、23年間コンサートマスターを務められた、日比浩一さんの退任公演でもあります。ずっとお世話になった日比さんと東京公演でもご一緒できるのは、身に余る光栄です。

——おしまいにお客様へのメッセージをお願いします。

 名古屋フィルは年に1回、東京公演を開催しております。今回は僕が音楽監督に就任して、初めての東京公演となります。新しい時代を迎えた名古屋フィルの「いま」を感じていただければ幸いです。ぜひぜひ、ご来場ください。

(ぶらあぼ2024年3月号より)

名古屋フィルハーモニー交響楽団 東京特別公演
2024.3/25(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:名フィル・チケットガイド052-339-5666
https://www.nagoya-phil.or.jp