ホルンで描く「変わるものと変わらないもの」
「バッハからコンテンポラリーへ」を掲げた意欲的なプログラムに俊英が挑む、東京オペラシティ名物の「B→C」。その満25年シーズンの最後を飾るのがホルンの庄司雄大だ。1993年生まれの彼は、東京藝大で学び、日本管打楽器コンクール第1位ほか数々の賞を受賞。反田恭平率いるジャパン・ナショナル・オケ、藝大フィル、そしてN響の契約楽員と、現在3つの楽団で活躍中の実力者である。
出身地仙台でも開催される今回のテーマは「変わる社会と変わらぬ自然」。まずは「変わりゆくもの」として、バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタとヒンデミットのアルトホルン・ソナタが公演の最初と最後に置かれ対比される。バッハの古い弦楽作品のホルンでの表現は公演冒頭から大注目。“昔”がホルン、“現在”がピアノで描かれるヒンデミット作品は興味津々の締めくくりとなる。さらに、ヴィトマン、ボザ、モッチ=エティエンヌ、バルボトゥ、メシアンら20〜21世紀の作曲家たちの「空気」「森」「川」「四季」「星」にちなむ作品が、「変わらぬもの」として置かれている。なかでも「ヴィトマンとメシアンの作品は重音など特殊な音が求められる。モッチの委嘱新作はバッハのモチーフも組み込んでもらった」(庄司)というから、どれも耳目を離せない。
ホルンは難儀な楽器だし、特に今回は「スタミナは考えていない選曲。今まででいちばん過酷」(庄司)な内容だけに、極めてチャレンジングだ。とはいえ庄司はまろやかで美しい音色と安定感抜群の技量の持ち主。ここはホルンの新たな魅力と若き名手ならではの妙技を堪能させてくれるに違いない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年3月号より)
2024.3/23(土)14:00 日立システムズホール仙台 交流ホール
問:HAL PLANNING 022-262-1682
https://www.hal-planning.com
3/26(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp