アレクサンダー・リープライヒ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

ドイツの中堅世代を代表するマエストロが再登場

左:アレクサンダー・リープライヒ ©Sammy Hart
右:辻 彩奈 ©Makoto Kamiya

 日本フィルの3月東京定期は、ドイツのアレクサンダー・リープライヒが4年半ぶりに登場する。2019年の2回の客演では古典/現代をほどよく結び付けて、エネルギッシュな演奏を聴かせたが、今回はシューマンの交響曲第3番と20世紀の作品を組み合わせたプログラムを披露する。

 リープライヒは、2019年まで7年間、ポーランド国立放送交響楽団の音楽監督を務め、ポーランドの作曲家を国内外で積極的に紹介してきた。過去2回のルトスワフスキに続き、今回はシマノフスキ。ヴァイオリン協奏曲第1番(1915〜16)を取り上げる。濃厚な官能性とオリエンタリズムが息づく単一楽章の作品。独奏の辻彩奈が長年演奏を熱望してきた曲でもあるという。辻は、2016年にモントリオール国際音楽コンクール第1位に輝き、艶やかな音色と確かな技巧で高い評価を得ている若手の筆頭株。シマノフスキでも持ち前の豊かな表現力を存分に発揮してくれるだろう。

 ドイツ・ロマン派の王道シューマンの交響曲第3番「ライン」(1850)は、病から復帰した作曲家が異例の速さで完成させた。力強さと希望に溢れる作品をリープライヒは晴れやかに歌い上げ、優れた解釈を示してくれるに違いない。プログラム冒頭は三善晃の「魁響の譜」(1991)。岡山シンフォニーホールの開館記念に委嘱され、「ものの始まる前の生命の声を想起して」書かれた。楽団創立以来、日本人作品を重視してきた日本フィル。リープライヒと作る演奏にじっくりと耳を傾けたい。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2024年3月号より)

第758回 東京定期演奏会 
2024.3/22(金)19:00、3/23(土)14:00 サントリーホール


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