5/11開幕! 別府アルゲリッチ音楽祭にクレーメル、マイスキーが出演

「未来を創る」をテーマに 都内で記者発表

 アルゲリッチ芸術振興財団は2月8日、都内で記者発表を行い、マルタ・アルゲリッチが総監督を務める「第24回別府アルゲリッチ音楽祭」の概要を発表した。会期は5月11日から7月28日まで。ビーコンプラザ(別府)やiichiko総合文化センター(大分)他での計5公演、東京での1公演に加え、関連コンサートを水戸と京都で開催する。

左より)三浦健(大分県企画振興部 芸術文化スポーツ課長)
伊藤京子(別府アルゲリッチ音楽祭 総合プロデューサー)
宮崎まゆ子(日本生命保険相互会社コーポレートプロモーション部 地域・社会共創部長)
絹川直(公益財団法人大林財団 常務理事)

 今年は、アルゲリッチが1994年にはじめて大分県を訪れてからちょうど30年の節目にあたるという。会見には、総合プロデューサーを務め、アルゲリッチとともに音楽祭を牽引してきたピアニストの伊藤京子や大分県の関係者らが出席した。第24回のテーマは「未来を創る Creating the future」。

 常々「教育なくして未来はない」と語る伊藤だが、開催を重ねるなかで「芸術文化というものが、単なるエンタテインメントではなくて、社会のなかにある芸術として、伝えられることがあるのではないか」と気づき、プログラムがどうあるべきかを考えるようになったという。昨年秋から冬にかけて、別府のしいきアルゲリッチハウスで行っていた室内楽シリーズのコンセプトでもあった「未来を創る Creating the future」を、今年の音楽祭のテーマとして採用した。そこには、「今」は先人たちの繋いできた歴史の上にあり、今の我々は未来へ向けて「まだ見ぬ世界の環境を創っていく」べき立場にあるというアルゲリッチ自身の強い想いが込められている。

Martha Argerich ©︎Rikimaru Hotta

「私が子どもたちの未来の話をすると、アルゲリッチ自身は『私は今が大事だと思うの』とよく言っていたんですね。確かに、今があるからこそ、私たちは未来を想像することができる。そして、どういう未来を作るのかというのは、今が大事なわけです。そういった観点から、アルゲリッチと相談しながら、この言葉をテーマに掲げることにしました」(伊藤)
 また、AIが登場し、人間の存在が薄れつつある現代社会にあって、未来を創るのはやはり「人」であると強調する。アルゲリッチは「人が創造し、人が演奏し、人へ伝えるというとても人間的な行為を、バッハが語ったように『魂から魂へ』伝えることの大切さやクラシック音楽の本質を問いながら、皆さまに演奏をお届けしていきたい」とメッセージを寄せた。

Gidon Kremer ©︎Paolo Pellegrin
Mischa Maisky ©︎Andrej Grilc

 最大の見どころは、アルゲリッチの長年の盟友であるギドン・クレーメル(ヴァイオリン)とミッシャ・マイスキー(チェロ)の出演。なんとも贅沢な3人のトリオ(5/17)が実現するほか、アルゲリッチとクレーメルのデュオ公演(5/19)、さらに東京では二人にN響メンバーの大宮臨太郎(ヴァイオリン)、坂口弦太郎(ヴィオラ)、市寛也(チェロ)が加わった室内楽コンサート(5/22)も予定されている。そのほか、恒例の「大分県出身若手演奏家コンサート」(5/11)や、昨年日本音楽コンクールとピティナ・ピアノコンペティション特級を制し話題を呼んだ鈴木愛美のピアノ・リサイタル(6/8)、遠藤真理(チェロ)&實川風(ピアノ)のデュオ公演(6/15)も行われる。

 関連コンサートとして実施されるのが、水戸芸術館での水戸室内管弦楽団の第113回定期演奏会(5/25, 5/26)。ラデク・バボラーク指揮でアルゲリッチがプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を弾くということで、クラシックファンの注目を集めそうだ。また、第1回から音楽祭の重要なコンセプトのひとつとして実施されている教育プログラム「ピノキオコンサート」は、「大人とこどものための音・学・会」と題し、京都大学を会場に7月28日に行われることが決定している。

 この日の会見では、マルタ・アルゲリッチと伊藤京子、そして公益財団法人アルゲリッチ芸術文化振興財団が、芸術を核とした社会貢献と地域振興への寄与を評価され、第13回大林賞を受賞したことも報告された。この賞は、公益財団法人大林財団が「都市のあり方や将来像に画期的な指標を与え実践した」人に対して隔年で授与しているもので、これまでに、台湾のオードリー・タン氏など各界の著名人が受賞している。

 伊藤は、コロナ禍のドイツで、当時のメルケル首相や文化大臣が芸術が社会に不可欠なものであるというスタンスのもと、さまざまな政策を実行していたことにも触れつつ、「芸術は人間にとって大切なことである、音楽は精神にとってインフラとなりうると考え、当初から『社会のインフラとしての芸術活動』ということを掲げてまいりました。そういう意味で、この大林賞が目指しているものと合致していると改めて思いました」と喜びを語った。3者の共同受賞は今回が初めてだという。総監督の来県30年に華を添える受賞となった。

▶音楽祭オープニング
大分県出身若手演奏家コンサート
2024.5/11(土)14:00 別府/ビーコンプラザ 国際会議室
出演:鈴木心毬(ソプラノ)他
▶ベスト・オブ・ベストシリーズVol.9 巨匠たちのアンサンブル ~ 極める
5/17(金)19:00 別府/ビーコンプラザ フィルハーモニアホール(別府市)
出演:マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、ミッシャ・マイスキー(チェロ)
▶デュオの世界~一期一会 アルゲリッチ & クレーメル
5/19(日)16:00 大分/iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ(大分市)
出演:マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
▶日本生命presents ピノキオ支援コンサート 音楽は人を結ぶ~共鳴
5/22(水)19:00 東京/すみだトリフォニーホール 大ホール
出演:マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、大宮臨太郎(ヴァイオリン)、坂口弦太郎(ヴィオラ)、市寛也(チェロ)
▶世界へ羽ばたく音楽家たちVol.13 鈴木愛美ピアノ・リサイタル
6/8(土)14:00 別府/しいきアルゲリッチハウス サロン
▶日本の音楽家の今を聴く
6/15(土)14:00 大分/平和市民公園能楽堂
出演:遠藤真理(チェロ)、實川風(ピアノ)

チケット一般発売 3/9(土)午前10:00〜
アルゲリッチ・オンラインチケット https://ticket.aserv.jp/argerich/

関連コンサート
▶水戸室内管弦楽団・別府アルゲリッチ音楽祭共同制作
水戸室内管弦楽団 第113回定期演奏会

5/25(土)19:00、5/26(日)15:00 水戸芸術館 コンサートホールATM
https://www.arttowermito.or.jp/hall/lineup/article_4548.html
▶ピノキオコンサート ~大人とこどものための音・学・会 at 京都大学
7/28(日) 詳細は後日発表

別府アルゲリッチ音楽祭
https://argerich-mf.jp