ここでしか聴けない圧巻のプログラム
岡本侑也は、精鋭居並ぶ若手チェリストの中でも一際強い光を放っている。彼は圧倒的な技巧と表現力で楽曲の凄みを表出する訴求力抜群の名手。2017年エリザベート王妃国際音楽コンクール第2位受賞で脚光を浴びて以来、第一線で活動を続け、中でもトッパンホールでは、16年ケラスとの共演を皮切りに種々の公演で顕著な足跡を刻んできた。特に際立ったのが21年の無伴奏リサイタル。デュティユー、カサド、クラム、藤倉大等の超難曲を全曲暗譜で鮮烈かつ奥深く表現し、皆を驚嘆させた。そして3月に行うのが「無伴奏 Ⅱ」。前回の無伴奏後、ツィメルマンとの欧州ツアーやエベーヌ弦楽四重奏団との共演も経験した岡本の、更なる進化に期待がかかる。
演目がまた物凄い。最初のペンデレツキ「カプリッチョ」は、「楽器を壊すのではと心配されるほどインパクト大」で「視覚的にも楽しめる」作品(トッパンホールのインタビューより。以下同)。次に「仏教的な雰囲気を感じさせる」尾高惇忠の「瞑想」を置き、20世紀の名作たるブリテンの無伴奏組曲第1番でコントラストを付ける。そして「グリッサンドの種類が20種以上ある韓国の伝統楽器をモチーフにした」ユン・イサンの「グリッセ」、「琵琶や尺八、習字の筆遣いのイメージが盛り込まれた」細川俊夫の「小さな歌」を経て、難物の「組曲」でペンデレツキに戻ってくる。岡本が「音のない時間もキーポイントになる作品を集めた」と語るモダン・プロは、他ではまず聴けない攻めた内容。これは、俊才が渾身の凄演でチェロ音楽の奥深さを知らしめる、圧巻の一夜となる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年2月号より)
【プログラム変更のお知らせ】
アーティストの強い希望により、当初発表した曲目の一部が変更となり、プログラムが下記のようになりました。
<変更後のプログラム>
ペンデレツキ:ジークフリート・パルムのためのカプリッチョ
尾高惇忠:独奏チェロのための《瞑想》
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 Op.72
ユン・イサン:グリッセ
細川俊夫:小さな歌
黛 敏郎:BUNRAKU【※】
イザイ:無伴奏チェロ・ソナタ Op.28【※】
※当初演奏を予定しておりました「ペンデレツキ:チェロのための組曲」から、こちらの2曲に変更いたします。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(2/27主催者発表)
2024.3/10(日)17:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com