東京春祭2024を華々しく飾る、オペラ公演の聴きどころ

20周年記念、傑作揃いの4演目に「リング」の豪華ガラ・コンサートも!

文:山崎浩太郎

 「東京・春・音楽祭」(以下、東京春祭)の催しのなかで中心的な存在となるのが、東京文化会館の大ホールで行なわれる、オペラ公演である。
 すべて演奏会形式上演で、海外の一流歌手を招き、NHK交響楽団、東京春祭オーケストラ、東京交響楽団、読売日本交響楽団、新国立劇場合唱団と東京オペラシンガーズなど、日本を代表する優秀なオーケストラと合唱団が競って登場する。
 2024年は東京春祭20周年を迎えて特に豪華に、恒例のワーグナーとプッチーニの両シリーズ、ムーティ指揮のヴェルディに加えて、リヒャルト・シュトラウスの《エレクトラ》と『ニーベルングの指環』ガラ・コンサートが行なわれる。ドイツとイタリアのオペラを代表する花形の名作たちが、上野の春を彩るのだ。

2023年《ニュルンベルクのマイスタージンガー》 (c)池上直哉

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.15
《トリスタンとイゾルデ》(3/27,3/30)

 東京春祭のオペラ公演のなかでも早くから行われているのが、このワーグナー・シリーズである。オペラを演奏する機会が少ないNHK交響楽団の登場が、毎回の大きな魅力だ。
 《トリスタンとイゾルデ》は、不倫関係に陥った男女の悲恋を描いた傑作。危険なまでに蠱惑的な音楽の力で、ヨーロッパ社会の文化と芸術に、絶大な影響を及ぼした。
 1939年生まれ、東京春祭の時期には85歳になるマレク・ヤノフスキは、このワーグナー・シリーズの大黒柱のような存在だ。ドイツ語圏の歌劇場で実績を積み、N響の楽員に対しても厳しく接し、妥協を許さない。《トリスタンとイゾルデ》は2020年に上演が予定されながらコロナ禍で中止になった演目だけに、期するものも大きいはず。トリスタン役にスチュアート・スケルトン、イゾルデ役にビルギッテ・クリステンセンと、声量とスタミナが要求される過酷な主役2人の配役も万全だ。

左より:マレク・ヤノフスキ (c)Felix Broede、スチュアート・スケルトン (c)Sim Canetty-Clarke、ビルギッテ・クリステンセン

ヴェルディ 《アイーダ》(4/17,4/20)

 1941年生まれ、イタリア・オペラ界のレジェンドであるリッカルド・ムーティは、東京春祭には「東京のオペラの森」時代の2006年にヴェルディのレクイエムを指揮して初登場、19年からはイタリア・オペラの宝灯を次代につなげるべく、若い指揮者と歌手たちを情熱的に指導する「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」でヴェルディのオペラを指揮して、聴衆からも高い人気を博している。
 2024年の東京春祭ではアカデミーを秋に移し、オペラの指揮に専念する。演目はヴェルディの代表作《アイーダ》。壮麗でスケールが大きなこの名作を半世紀前から指揮してきたムーティは、円熟の熱演を聴かせてくれるだろう。出演者も、スカラ座など欧米の一流歌劇場で活躍中のマリア・ホセ・シーリ(アイーダ)とユリア・マトーチュキナ(アムネリス)、俊英テノールのクロディアン・カチャーニ(ラダメス)など、マエストロが信頼を寄せる歌手たちが集う。さらに、俊英の奏者たちがムーティの指揮で毎年献身的な名演を展開する、特別編成の東京春祭オーケストラも大きなききものだ。

左より:リッカルド・ムーティ ©Todd Rosenberg Photography、マリア・ホセ・シーリ ©Michele Monasta、ユリア・マト―チュキアナ

東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.5
《ラ・ボエーム》(4/11,4/14)

 毎年好評のプッチーニ・シリーズ、2024年は永遠の人気作《ラ・ボエーム》。パリの一隅に暮らす詩人志望の若者と貧しいお針子の悲恋を、哀歓豊かに描く名作だ。ロドルフォ役は、輝かしい高音で「パヴァロッティの再来」ともいわれ、イタリアなどで引っ張り凧の人気者ステファン・ポップが歌い、ミミ役にも往年の名歌手カバイヴァンスカの愛弟子で、ヴェネツィアなど各地の一流歌劇場で歌ってこの役を得意とするセレーネ・ザネッティが出演する。指揮のピエール・ジョルジョ・モランディも、ムーティのアシスタントも長くつとめて定評ある実力者だ。新国立劇場などで豊かなオペラ経験をもつ東京交響楽団の演奏も注目だ。

左より:ピエール・ジョルジョ・モランディ ©Elena Cherkashyna、ステファン・ポップ ©Gigi+Melinte+Visuals、セレーネ・ザネッティ ©Giacomo Orlando

リヒャルト・シュトラウス 《エレクトラ》(4/18,4/21)

 ギリシャ神話の復讐劇を題材に、暗い情念が凄まじいエネルギーで噴出されるオペラ。その衝撃性は、初演から一世紀をへても薄れることがない。
 読売日本交響楽団と常任指揮者のセバスティアン・ヴァイグレは、2022年に読響の特別演奏会でこの作品を演奏するはずだった。コロナ禍のために中止されたその公演が、東京春祭に舞台を移して実現する。東京春祭にとっては、前身の「東京のオペラの森」第1回の2005年に小澤征爾指揮でとりあげた、ゆかりの深い演目である。
 至難の題名役にエレーナ・パンクラトヴァ、母クリテムネストラに藤村実穂子と歌手陣が強力なうえに、ヴァイグレと読響は近年とても充実した関係を築いているから、名演が期待できる。

左より:セバスティアン・ヴァイグレ ©読売日本交響楽団、エレーナ・パンクラトヴァ ©Vitaly Zapryagaev、藤村実穂子 ©R&G Photography

The 20th Anniversary
ワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサート(4/7)

 ワーグナー畢生の大作『ニーベルングの指環』の4作品から名場面を集めた、豪華な演奏会。《トリスタンとイゾルデ》と同じく、ヤノフスキがN響を指揮する。
 ヤノフスキは東京春祭で2014年から4年をかけて演奏会形式での全曲上演を達成、深い感銘を与えてくれた。その美しい記憶を蘇らせて、音楽祭の20周年を記念するにふさわしい演奏会となることだろう。

【出演者変更】
※ 《アイーダ》出演のクロディアン・カチャーニ(ラダメス役・テノール)は、都合により出演を見合わせることとなりました。代わりまして、ルチアーノ・ガンチが出演いたします。
詳細は音楽祭公式ウェブサイトでご確認ください。(24.1/30主催者発表)


東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.15
《トリスタンとイゾルデ》(演奏会形式/字幕付)

2024.3/27(水)、3/30(土)各日15:00 東京文化会館
●出演

指揮:マレク・ヤノフスキ
トリスタン(テノール):スチュアート・スケルトン
マルケ王(バス):フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ
イゾルデ(ソプラノ):ビルギッテ・クリステンセン
クルヴェナール(バリトン):マルクス・アイヒェ
メロート(バリトン):甲斐栄次郎
ブランゲーネ(メゾソプラノ):ルクサンドラ・ドノーセ
牧童(テノール):大槻孝志
舵取り(バリトン):高橋洋介
若い水夫の声(テノール):金山京介
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
●料金(税込)
S¥26,500 A¥22,000 B¥18,000 C¥14,500 D¥11,500 E¥8,500
U-25¥3,000

《アイーダ》(演奏会形式/字幕付)

4/17(水)、4/20(土)各日14:00 東京文化会館
●出演

指揮:リッカルド・ムーティ
アイーダ(ソプラノ):マリア・ホセ・シーリ
ラダメス(テノール): ルチアーノ・ガンチ(都合によりクロディアン・カチャーニより変更になりました)
アモナズロ(バリトン):セルバン・ヴァシレ
アムネリス(メゾソプラノ):ユリア・マトーチュキナ
ランフィス(バス):ヴィットリオ・デ・カンポ
伝令(テノール):石井基幾
巫女(ソプラノ):中畑有美子
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:仲田淳也 他
●料金(税込)

S¥29,500 A¥26,000 B¥22,000 C¥18,000 D¥14,000 E¥9,000
U-25¥3,000

東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.5
《ラ・ボエーム》(演奏会形式/字幕付)

4/11(木)18:30、4/14(日)14:00 東京文化会館
●出演

指揮:ピエール・ジョルジョ・モランディ
ロドルフォ(テノール):ステファン・ポップ
ミミ(ソプラノ):セレーネ・ザネッティ
マルチェッロ(バリトン):マルコ・カリア
ムゼッタ(ソプラノ):マリアム・バッティステッリ
ショナール(バリトン):リヴュー・ホレンダー
コッリーネ(バス): ボグダン・タロシュ
管弦楽:東京交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:仲田淳也
児童合唱指揮:長谷川久恵 他
●料金(税込)
S¥25,500 A¥21,500 B¥17,500 C¥14,000 D¥10,500 E¥7,500
U-25¥3,000

《エレクトラ》(演奏会形式/字幕付)

4/18(木)19:00、4/21(日)15:00 東京文化会館
●出演

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
エレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ(メゾソプラノ):藤村実穂子
クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス
エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー
オレスト(バス):ルネ・パーペ
第1の侍女(メゾソプラノ):中島郁子
第2の侍女(メゾソプラノ):小泉詠子
第3の侍女(メゾソプラノ):清水華澄
第4の侍女/裾持ちの侍女(ソプラノ):竹多倫子
第5の侍女/側仕えの侍女(ソプラノ):木下美穂子
侍女の頭(ソプラノ):北原瑠美
オレストの養育者/年老いた従者(バスバリトン):加藤宏隆
若い従者(テノール):糸賀修平
召使:新国立劇場合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:冨平恭平
●料金(税込)
S¥25,500 A¥21,500 B¥17,500 C¥14,000 D¥10,500 E¥7,500
U-25¥3,000

The 20th Anniversary
ワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサート

4/7(日)15:00 東京文化会館
出演・曲目
舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』より
序夜《ラインの黄金》より第4場「城へと歩む橋は……」(フロー)〜 フィナーレ

ヴォータン:マルクス・アイヒェ(バリトン)
ローゲ:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
フリッカ:杉山由紀(メゾソプラノ)
ヴォークリンデ:冨平安希子(ソプラノ)
ヴェルグンデ:秋本悠希(メソソプラノ)
フロースヒルデ:金子美香(メゾソプラノ) 他

第1日《ワルキューレ》より第1幕 第3場「父は誓った 俺がひと振りの剣を見出すと……」(ジークムント)〜 第1幕フィナーレ
ジークムント:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)

第2日《ジークフリート》より第2幕
 第2場「あいつが父親でないとは うれしくてたまらない」(ジークフリート)―森のささやき
 第3場「親切な小鳥よ 教えてくれ……」(ジークフリート)~第2幕フィナーレ

ジークフリート:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
森の鳥:中畑有美子(ソプラノ)

第3日《神々の黄昏》より第3幕 第3場ブリュンヒルデの自己犠牲「わが前に 硬い薪を積み上げよ……」(ブリュンヒルデ)
ブリュンヒルデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)

指揮:マレク・ヤノフスキ
管弦楽:NHK交響楽団
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
●料金(税込)
S¥16,500 A¥14,500 B¥12,500 C¥10,500 D¥8,500 E¥6,500
U-25¥3,000

【来場チケットご購入はこちら】
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●東京文化会館チケットサービス(電話・窓口)
TEL:03-5685-0650(オペレーター)
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東京・春・音楽祭サポートデスク050-3496-0202
営業時間:月・水・金、チケット発売日(10:00~15:00)
※音楽祭開催期間中は、土・日・祝日も含め全日営業(10:00~19:00)
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※ネット席チケットは2/23(金・祝)発売