シューマン & ブラームス 全曲ヴァイオリン・ソナタ・チクルス vol.2
樫本大進 & エリック・ル・サージュ 2024

至高の二人が織りなす濃密なアンサンブル

左:樫本大進 ©Keita Osada(Ossa Mondo A&D)
右:エリック・ル・サージュ

 ソリスト、そしてベルリン・フィルのコンサートマスターとして第一線で活躍する樫本大進。そして、フレンチ・ピアニズムの継承者であり、室内楽の名手としても名高いエリック・ル・サージュ。

 2人が出会ったのは、ノストラダムスと空軍基地でも知られる歴史ある南仏の城塞都市——この地で行われるサロン・ド・プロヴァンス国際室内楽音楽祭だった。ル・サージュ自身がフルート奏者のエマニュエル・パユやクラリネット奏者のポール・メイエとともに主宰するアットホームな手作りの音楽祭だ(アーティスト自身がチケットのもぎりをやっていたりすることもあるらしい)。

 音楽祭の常連となった樫本大進は、ル・サージュとの共演を20年近く重ねている。この息の合ったコンビが、「シューマン&ブラームス 全曲ヴァイオリン・ソナタ・チクルス」を引っさげて、日本各地でツアーを行う。

 チクルスを締めくくる2回目にあたる2024年1月、2月の公演では、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番で始まり、シューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番で終わるプログラムを披露する。

 穏やかな抒情と憂愁に彩られたブラームス作品に、エネルギッシュな情感があふれんばかりのシューマン作品。互いの個性が色濃く刻印された、対照的ともいえる2作品だ。

 そして、そのあいだに、ブラームス、ディートリッヒ、シューマンの3人の共作である「F.A.E. ソナタ」、そしてクララ・シューマンの「3つのロマンス」が演奏される。

 前者は、初めてブラームスがシューマン宅を訪れたとき、2人を引き合わせた名ヴァイオリン奏者ヨーゼフ・ヨアヒムのために作られた、まさに友情の証といっていい作品だ。そして、後者はこれらの2人の作曲家とは切っても切れない関係にあるクララ・シューマンによる情感豊かな作品。シューマンとブラームスの強烈な個性をリンクし、そのあいだをくっきりと埋める卓抜なプログラミングといえるだろう。

 スケール感をもちながら繊細な表現で聴かせる樫本と、精妙にして立体的に響かせつつも、艶かしいまでに音色や表情を移ろわすル・サージュ。南仏のアットホームな雰囲気のなかで培われた臨機応変なアンサンブルが華々しく繰り広げられる。その馥郁としたロマン派の響きも、インティメートな形で客席へ届けられることだろう。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年12月号より)

樫本大進〈プレミアム室内楽シリーズ〉vol.2
シューマン & ブラームス 全曲ヴァイオリン・ソナタ・チクルス vol.2
樫本大進 & エリック・ル・サージュ 2024

2024.2/4(日)14:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp

他公演 
2024.1/27(土) 北九州市立響ホール(093-663-6661)
1/28(日) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール(04-2998-7777)
1/31(水) 大阪/住友生命いずみホール(06-6944-1188)
2/2(金) 静岡音楽館AOI(054-251-2200)
2/3(土) 横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080)