ウクライナ出身の指揮者 オクサーナ・リーニフが上映会を開催

戦時下のウクライナを描いたドキュメンタリー映画
『連帯のためのモーツァルト』

 ボローニャ歌劇場の音楽監督として来日中の指揮者オクサーナ・リーニフが、自ら制作に関わったドキュメンタリー映画『連帯のためのモーツァルト(原題 Salzburg- Lviv:Mozart for Solidarity)』のマスコミ向け上映会を11月1日、在日ウクライナ大使館で行った。

 この映画は、ロシアの侵攻が続く、過酷な環境で活動を続けるウクライナの音楽家のインタビューや彼らの演奏シーンで構成されていて、リーニフは進行役として登場している。プログラムの中心となるのは、モーツァルトの四男でウクライナのリヴィウに30年暮らしたフランツ・クサヴァー・モーツァルト。

 上映に先立って、リーニフは次のようにコメントした。

「フランツ・クサヴァーがウクライナで暮らしていたことは意外と知られていません。ソ連時代はこのような情報を公開することを禁じられていました。クラシック音楽の発展はウクライナではなく、ロシアからとしたかったからです」

 2023年9月には、リーニフが発案・研究・編集に携わった『モーツァルトの息子』という500ページにわたる本が出版された。調査にはザルツブルクの国際モーツァルテウム財団も参画し、フランツ・クサヴァーの106通にもおよぶ貴重な書簡がまとめられている。

「この本のために4年間を費やしました。モーツァルトの息子についての研究としては世界的に見ても貴重なものです。戦時下に関わらず、この本を出版できたことをとても嬉しく思っています。これからたくさんの言語で出版できるよう努力していきます」

 映画はYouTubeですでに日本語字幕付きで公開されている。ロシアの攻撃が始まった朝の緊迫感、シェルターで身を寄せ合って聴いた音楽、幼い子をもつ歌手が平和への願いを込めて歌う子守唄など、胸に迫る語りと音楽で刻々と綴られていく。

 そして最終盤には、リーニフ自らが創設しおよそ70人の若い音楽家が所属するウクライナ・ユース・シンフォニーについて、切実な思いを語っている。

「音楽は彼らを戦争の前に引き戻す唯一の糸でした。
 彼らと彼らの両親、破壊された音楽学校、彼らの子ども時代をつなぐ唯一の糸なのです。
 この若者たちの声は、
 私たちが独自の文化を持つヨーロッパの国であること、
 私たちを殺す必要などないことを世界に示すために、
 非常に重要なものとなるでしょう」