コンクールを制覇するソリスト続出!
驚異のクラシック音楽家集団 “ハマのJACK”とは!?

左より:東亮汰さん、三又治彦さん

INTERVIEW 三又治彦さん(ヴァイオリン/ハマのJACK 主宰)× 東亮汰さん(ヴァイオリン)

 ーハマのJACKー
 およそクラシック音楽のグループ名とは思えない名称。しかし、実はNHK交響楽団のメンバーが中心となり、横浜市を拠点に活動している演奏団体なのです。N響 第1ヴァイオリン 次席奏者の三又治彦さんの呼びかけで2008年に発足。子どもや障がいのある方など、日頃クラシックのコンサートには来ていない人々に、演奏だけでなくワークショップなども交えて音楽の楽しさを伝える活動を展開しています。また、「金の卵を探しています」という若手演奏家を発掘・応援するプロジェクトでは、いまのクラシックシーンの第一線で活躍するアーティストを数多く輩出してきました。今回は、ハマのJACKの主宰者 三又さんと、「金の卵」オーディションに2回合格し、反田恭平さん率いるJapan National Orchestraのコアメンバーとしても活動している東亮汰さんに話を聞きました。

港町・横浜でクラシックを広める!

――まず「ハマのJACK」の誕生について教えてください。

三又 出発点は本格的に活動が始まる2008年より少し前にあります。横浜市開港記念会館――“ジャックの塔”と呼ばれる場所で、クラシックのコンサートシリーズがあって、僕もそこに一奏者として出演していました。ある時、僕がそのシリーズを引き継いでいくことになったんです。ということで活動の始まりが横浜のジャックの塔だったから「ハマのJACK」。別の場所だったら違う名称になってたはずです(笑)。「この街で、僕らの団体としてやっていこう」と決意しました。

ハマのJACK

――当初から、子どもや障がいのある方々に音楽を届けるという意向がありましたね?

三又 普段、僕はとても恵まれた環境で演奏させてもらっていますが、20年後、30年後を考えたとき、次の世代がクラシックに触れるきっかけをもっと作らなければと思ったんです。
 だからまず子どもたちに、そして当時コンサートの場が少なかった障がいのある方や高齢者の方に音楽を届けたいと考えました。地域のコミュニケーションの手段としてもクラシックが役立つはずだ、と。最初は1年に2回くらい、音楽家が好きなように企画して好きな曲を演奏し、それを地域の皆さんに届けるというシンプルなイメージでした。

ワークショップではヴァイオリンを手作り!

手作りヴァイオリン

――ワークショップが独特でおもしろいですね。

三又 手作りの打楽器や管楽器は他の団体でもやっています。でも僕たちは弦楽器の団体だから「ヴァイオリンを作ろう!」となりました。ホームセンターで木材を買ってきて、子どもたちに箱を組み立ててもらう。弓も菜箸を使って作って。もちろん本物の楽器には敵わないけど、「音が出る!」「自分の手で作ったものが鳴る!」という体験が何より大きいんです。みなとみらいホールの大ホールで、子どもたちが自作した楽器で合奏したこともありました。

一流演奏家への登竜門!? 俊才続出の“金の卵プロジェクト”

2012年5月20日「金の卵みつけました 演奏会」でソリストを務める当時12才の東さん

――「金の卵を探しています」プロジェクトはどのように始まったのですか?

三又 地域の人や若い人に音楽を届けることに加えて、「音楽家を育てる」活動をしたいと思いました。僕が教えるのではなく、成長する場を用意するというやり方です。N響の仲間に声をかけたら喜んで協力すると言ってくれました。まず弦楽五重奏と演奏するオーディションを行います。そこで合格すると、N響メンバーを中心としたハマのJACKオーケストラ(指揮者なし)とコンチェルトを演奏できるんです。

「金の卵」オーディション主な受賞者
辻彩奈(2010年第1回)
東亮汰(2012年第2回、2018年第8回)
関朋岳(2012年第2回)
前田妃奈(2015年第5回)
橘和美優(2015年第5回 2016年第6回)
中野りな(2016年第6回)
HIMARI(2017年第7回)
渡辺紗蘭(2018年第8回 2021年第11回)
鳥羽咲音(2019年第9回)
中谷哲太朗(2016年第6回、2023年第13回)
中原梨衣紗(2023年第13回)

――実際に参加されてみて東さんはいかがでしたか?

 僕はテレビで『N響アワー』を見て育っていたので、「申し込めば、N響の人たちと共演できる可能性がある!」ということが、ものすごく魅力的に映ったんです。当時の自分にとって、オーケストラと演奏できるという経験は特別で、しかもそれがN響のメンバーという。指揮者がいないので、オーケストラの呼吸や反応に自分が直接アンテナを張らないといけない。ピアノ伴奏の1対1と違って、多くの人と“会話する”意識が必要で、それを幼い頃に体験できたのは本当に大きかったです。
 また、N響の皆さんもリハーサルの段階からプロ奏者の視点で、「こう弾くと音楽を共有しやすい」「ここはこういう心構えで」とアドバイスをいただきました。ソリスト目線だけでなく、オケ目線の助言を10代のうちに受けられたことは、今振り返ってみても貴重な財産です。その後のコンクールで本番を迎えた時にも、その経験は本当に支えになりました。

――今後はどのような活動をしていきたいですか?

 僕の場合、出会いに恵まれて、学生のうちからソロも室内楽もオーケストラも経験する機会が広がっていきました。その中で、固定概念や「こうでなければいけない」という思い込みが、いい意味で崩れてきた感覚があります。
 一方で、日本の奏者のレベルは確実に上がっていると思いますし、同世代でも国際コンクールで優勝や入賞するのが当たり前になってきました。でもクラシック音楽のトレンドの中心はまだヨーロッパにあり、日本が“発信側”になれていないもどかしさがあります。
 自分が生きているうちに、日本のクラシック界をもっと発信側へ押し上げたいという野望がどこかにあるんです。そのためには、海外に身を置いて、何が足りないのか、何を変えればいいのかを自分で掴みたい。まだ柔軟に吸収できる感覚があるうちにヨーロッパで新しいものを取り入れたいし、30歳が見えてきた“今がタイミング”だと思っています。

三又 そういう好奇心を持って動けるひとが、「金の卵」から出てきた。僕がやってきたことが、少しでも背中を押せているなら嬉しいですね。

取材・文:編集部

本番前に行われるアンサンブルレッスン

【Information】

第16回 ハマのJACK コンチェルト・ソリストオーディション《金の卵探しています》
予選:2026.5/10(日)ボッシュホール 都筑区民文化センター
本選:6/21(日)ボッシュホール 都筑区民文化センター
演奏会:8/8(土)横浜みなとみらいホール 小ホール
http://hamajack.sun.bindcloud.jp


東亮汰 & 髙木竜馬 デュオリサイタル
2026.1/8(木) 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

《ダブル・ライジングスター》
東亮汰&務川慧悟 デュオ・リサイタル
音楽堂ホリデーアフタヌーンコンサート2026前期

2026.3/21(土) 神奈川県立音楽堂
12/19発売

https://www.ryotahigashi.com


反田恭平プロデュース JNO室内楽シリーズ2026
ヴァイオリン東亮汰 × JNO Chamber Colors

東亮汰&務川慧悟
2026.3/18(水)19:00 奈良/秋篠音楽堂
3/19(木)19:00 愛知/電気文化会館ザ・コンサートホール
3/28(土)14:00 熊本/益城町文化会館

https://www.jno.co.jp