イタリア古楽界の鬼才が魅せる孤高のパフォーマンス
世界中から引く手あまたのヴァイオリニストでありながら、1990年にピリオド楽器によるアンサンブルであるエウローパ・ガランテを設立して以来、指揮者としても目覚ましい活躍をみせているファビオ・ビオンディ。レパートリーもバロックの管弦楽曲からロマン派のオペラまでと幅広い。神奈川県立音楽堂では、これまでバロック・オペラのシリーズを展開してきた。2006年にヴィヴァルディの《バヤゼット》、15年にも同作曲家の《メッセニアの神託》、22年には彌勒忠史(演出)とのコンビでヘンデルの《シッラ》を実現させている。いずれも日本初演である。ほとんど未知のオペラを成功させる意欲、手腕は並大抵のものではない。
来年2月の来日公演は昨年の秋以来、約1年ぶりとなる。手兵エウローパ・ガランテを率いてのバロック・オペラから一転、今回はバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を披露する。ヴァイオリニストにとって真価が問われる「試金石」の全曲演奏は、初演オペラに勝るとも劣らない意欲的な挑戦であろう。マチネとソワレの2部構成による同日全曲演奏であることも見逃せない。ビオンディは「無伴奏」を2020年に録音しているが、極めて独特な歌い回しに加え、即興と思しき装飾にも驚かされる。ライブでは一体どんなことをやってくるのか目が離せない。また、関連企画として音楽学者、樋口隆一氏による事前トークイベント(24.1/24)も用意されており、大変充実した企画となっている。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2023年11月号より)
2024.2/17(土) 【第1部】14:00 【第2部】18:00
神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415
https://www.kanagawa-ongakudo.com