テーマは「名作を新しいフェーズに」〜東京二期会2024/25シーズンラインナップを発表

 東京二期会が10月13日、2024/25シーズンラインナップを発表した。会見には、清水雅彦・理事長、山口毅・常務理事兼事務局長に、ソプラノの冨平安希子が登壇。フォトセッションには、この10月に横須賀、札幌、東京での公演を終えた二期会創立70周年記念公演《ドン・カルロ》で演出を手掛け、新シーズンでも再登場するロッテ・デ・ベアも参加した。

左より:山口毅、冨平安希子、ロッテ・デ・ベア、清水雅彦

 清水理事長は、まず東京二期会の今後のあり方について、「オペラ公演を続け、文化芸術の発展に寄与し続けるためには、単に質が良く、芸術性の高い公演を上演していればよい、という時代は過ぎ去りました。公演のあり方も変えていかなければならない」として、新シーズンについては、上演4演目のうち2つが女性演出家、またその一つが指揮者も女性であることをあげ、「世界では当たり前で誇るべきことではないが、これは二期会史上初めてのことで一歩踏み込んだ形。我々にとって新たな挑戦になるとともに、これまでに築いてきた海外歌劇場との厚い信頼関係のもとに、新しい時代の潮流に呼応する舞台をご提供していきたい」と考えを示した。

 続いて山口事務局長が2024/25シーズンラインナップを説明。4演目すべて新制作上演で、シーズンテーマは「名作を新しいフェーズに」。「社会の中における二期会の存在も新しいフェーズに向けて」、「世界と同じ潮流のなかで新しいものをつくっていきたい」という意図もこめてのラインナップという。各演目には、作品にあった指揮者とオーケストラ、またこれまで共演経験のあるオーケストラを起用し、より高みを目指して作品づくりに取り組んでいく。 
 さらに東京二期会では「未来の聴衆、オペラへの投資」として、若い人を対象にした取り組みも力を入れており、学生席は各公演、前売2000円で販売。今後も「一人でも多くの若い方に観ていただきたい」と強調する。

冨平安希子

 《影のない女》で皇后役を演じる冨平は、ラインナップをみて「刺激的な作品が集まっていてワクワクする」と期待を寄せる。皇后役は自分のキャリアの中で「大きな挑戦」と語り、演出を手掛けるペーター・コンヴィチュニーについては、2018年上演の《魔弾の射手》での経験から、「この難解な作品をコンヴィチュニーさんがどう演出されるのか。コンセプトも少し伺っていますが、観客に対して問題提起をされる方なので、おそらく驚くような演出になると思います。皇后は内面の変化が顕著にみられる役で入念に準備を進めていきたい。オール日本人キャストで贈る《影のない女》を多くの方に観てほしいです」と述べた。

 山口事務局長による各演目のコメントは以下のとおり。新シーズンで見せる新たな展開に期待したい。

【2024/25シーズンラインナップ】

●2024年
[9月]モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》(新制作)

《東京二期会オペラ劇場》シャンゼリゼ劇場、カーン劇場、パシフィック・オペラ・ヴィクトリアとの共同制作
指揮:クリスティアン・アルミンク 演出:ロラン・ペリー
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
会場:新国立劇場オペラパレス

2021年に《ファルスタッフ》で好評を博したロラン・ペリーの演出による新制作。東京二期会ではモーツァルト作品を多く上演しているが、《コジ・ファン・トゥッテ》は宮本亞門演出(2006年)以来久しぶり。アルミンクと新日本フィルは2008年上演《マクロプロス家の事》以来のタッグ。2022年3月にパリでプレミエが行われ、世界を巡って東京・新国立劇場で上演。ロラン・ペリーも来日し、東京バージョンの《コジ》をつくる。

[10月]R.シュトラウス《影のない女》(新制作)
《東京二期会オペラ劇場》ボン歌劇場との共同制作
指揮:アレホ・ペレス 演出:ペーター・コンヴィチュニー
管弦楽:東京交響楽団
会場:東京文化会館 大ホール

2022年2月に予定していた延期公演。ペーター・コンヴィチュニーが初めて手掛ける《影のない女》。
東京二期会では、2018年《魔弾の射手》でコンビを組んだコンヴィチュニー&アレホ・ペレス指揮が今回も実現。ジョナサン・ノットとともに多くのオペラを手掛けている東響を迎えて、彼らと一緒に、音楽的にも、舞台面でも高いレベルの上演を目指していく。日本から世界にむけてワールドプレミエを制作。

●2025年
[2月]ビゼー《カルメン》(新制作)

《東京二期会オペラ劇場》
指揮:沖澤のどか 演出:イリーナ・ブルック
管弦楽:読売日本交響楽団

演出家と指揮者ともに女性の起用は東京二期会として初。イリーナ・ブルックは日本でのオペラ初演出。演出家ピーター・ブルックの娘で、ヨーロッパを代表する演出家。演劇を中心に活動していたがオペラへの造詣も深く、最近ではウィーン国立歌劇場《真夏の夜の夢》や《ドン・パスクワーレ》を演出している。
舞台美術は、ロバート・カーセンなど世界の名だたる演出家とともに美術を手掛けているパトリック・キンモンスが担当。イリーナ・ブルックとのコンビは、ミラノ・スカラ座で24年4月に《つばめ》を予定。二人は長期にわたって日本に滞在し、指揮者の沖澤のどかとともに、新しい《カルメン》を創作予定。同作品は2003年以来の上演で、レパートリー化、海外での上演を目指す。

[7月]チャイコフスキー《イオランタ/くるみ割り人形》(新制作)
《東京二期会オペラ劇場》ウィーン・フォルクスオーパー、ウィーン国立バレエ団との共同制作
指揮:マキシム・パスカル 演出:ロッテ・デ・ベア
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

さきごろ上演した《ドン・カルロ》に続く、東京二期会 ✕ ロッテ・デ・ベア演出の2作目。デ・ベアが芸術監督を務めるウィーン・フォルクスオーパーとウィーン国立バレエ団との共同制作。彼女のアイディアで、《イオランタ》を大きなフレームとして『くるみ割り人形』を組み込んでいく、オペラとバレエが融合した作品。東京上演にあたって日本のバレエ団の出演を調整中。
指揮台に立つマキシム・パスカルは、東京二期会と《金閣寺》以来、《サムソンとデリラ》《ルル》で共演。パスカルの初来日となった2017年パリ・オペラ座バレエ団日本公演で『ダフニスとクロエ』を振っていたこともあり、今回のオペラとバレエの融合という新しい形には彼が適任だろうと、ロッテ・デ・ベアとも相談して招聘。

東京二期会
http://www.nikikai.net
http://www.nikikai.net/news/view_00730.html
*2024/25シーズン各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。