チェコ・フィルハーモニー弦楽アンサンブル
名門チェコ・フィルの精鋭たちによる “セレナード”

二大セレナードを名門オケの芳醇な響きで味わう

 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団といえばチェコを代表する名門オーケストラとして名高い。とりわけ弦楽セクションのしなやかで柔らかい響きには定評がある。そんなチェコ・フィルの弦楽セクションの精鋭たちで組織されたのがチェコ・フィルハーモニー弦楽アンサンブルだ。チェコ・フィルのコンサートマスター、ヤン・フィシェルを筆頭に、28名のメンバーが来日する。

 プログラムはチェコ伝統の弦の魅力を最大限に味わえるものといってよいだろう。前半は「お国もの」であるドヴォルザーク。有名な歌曲を原曲とする「我が母の教え給いし歌」弦楽合奏版、そしてドヴォルザークならではののびやかで親しみやすい旋律美にあふれた弦楽セレナードが演奏される。後半はチャイコフスキーで、甘美な旋律で有名な「アンダンテ・カンタービレ」弦楽合奏版と、このジャンルの最高傑作とでもいうべき弦楽セレナードが組み合わされる。

 数ある弦楽セレナードの名曲のなかでも、双璧をなすのがドヴォルザークとチャイコフスキーだろう。ドヴォルザーク作品にはこの作曲家ならではの素朴な味わいと土の香りがあふれている。一方、チャイコフスキー作品は華麗にして優雅、そして全編に高揚感がみなぎっている。それぞれの作曲家のキャラクターが作品にそのまま表れているが、前者が1875年、後者が1880年と、作曲時期はほぼ同年代。19世紀後半に生まれた二大セレナードをいちどに楽しめるのは大きな魅力だ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年11月号より)

2023.11/5(日)14:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
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