フォーレ四重奏団

時代を牽引するピアノ四重奏団による2年ぶりの来日ツアー

 実力のある弦楽四重奏団は数多く存在するが、常設のピアノ四重奏団は世界的に見ても珍しい。1995年、フォーレの生誕150年に作曲家の名を冠して生まれたフォーレ四重奏団も結成から約30年。その卓越した実力は広く認知され、日本での人気も定着している。フランスの作曲家の名を冠しているものの、メンバーの出自はドイツというのは意外であるが、彼らのレパートリーはフランス音楽に限らずオリジナル作品から編曲ものまで幅広い。常設のピアノ四重奏団ならではとも言えるだろう。

 来日は2021年以来2年ぶりとなる。前回はコロナ禍の入国規制をかいくぐっての厳しい状況下の公演であったことも記憶に新しい。今年の冬のツアーでは西宮に始まり、東京、高崎、横浜の4都市で公演が予定されている。プログラムも開催場所により違いがあり、充実したレパートリーが堪能できる。

 前半の西宮と東京公演は、マーラーのピアノ四重奏曲(断章)に始まる。第1楽章のみが残されたフラグメントであるが、最初期のマーラーの貴重な室内楽作品である。次にベートーヴェンの「ピアノと管楽器のための五重奏曲」から作曲家自身によって編曲されたウィーン時代唯一のピアノ四重奏曲 作品16、そしてまだわずか16歳のメンデルスゾーンによるピアノ四重奏曲第3番が続く。メンデルスゾーンの通し番号付きのピアノ四重奏曲は録音でも聴くことができるが、収録から10年以上が経過した今の演奏に注目であろう。すべてドイツ系音楽でまとまっているが、無難なスタンダード作品に留まらないところに演奏者のこだわりが感じられる。

 続く高崎公演には、フォーレ四重奏団の十八番で、過去の来日でも評判を呼んだ演目が並ぶ。ブラームスのピアノ四重奏曲第1番では、精密ながら濃密な情念を秘めた演奏が期待される。もう一つも過去の来日公演で取り上げてきたムソルグスキーの「展覧会の絵」。楽団のピアノパートを担当するD.モメルツとG.グルツマンの編曲によるピアノ四重奏版は、フォーレ四重奏団のオリジナル作品と言っても過言ではないだろう。室内楽の新領域を切り開く活動という意味でも注目である。

 最後の横浜公演ではフォーレのピアノ四重奏曲第1番を中心に据え、先行する公演で披露されるマーラー、ブラームスが前後を固める。いずれのプログラムも魅力的であるが、録音実績のある自家薬籠中の作品も多く、完成度が高くエキサイティングな演奏が期待できそうだ。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2023年10月号より)

2023.12/3(日)14:00 兵庫県立芸術文化センター(小)
問:芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255 
https://www.gcenter-hyogo.jp
12/7(木)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com
12/9(土)14:00 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900 
https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/
12/10(日)14:00 横浜みなとみらいホール(小)
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 
http://www.pacific-concert.co.jp
※公演によりプログラムが異なります。