水戸室内管弦楽団 第112回定期演奏会

今なお新たな視座を与え続けてくれるレジェンド音楽家

ハインツ・ホリガー (c)D.Vass

 作曲家、オーボエ奏者、指揮者として、80歳を超えてもなお衰え知らずの活躍を続けるレジェンド、ハインツ・ホリガーが水戸室内管弦楽団の定期演奏会に帰ってくる。今回も音楽家ホリガーの全体像がひとつの公演に凝縮されたような密度の濃いプログラムが組まれている。

 まず、作曲家としてのホリガーの姿を伝えるのは、2012年に書かれた「メタ・アルカ」。カメラータ・ベルンの創立50周年を祝って書かれた弦楽合奏のための作品で、それぞれ独立した全14の声部からなる緻密なテクスチャーを持った作品だ。曲名はカメラータ(CAMERATA)のアナグラムに由来する。

 オーボエ奏者としてのホリガーは、フンメルの「オーボエと管弦楽のための序奏、主題と変奏曲」および現代スイスの作曲家ケルターボーンの「オーボエと弦楽オーケストラのための変奏曲」を演奏する。前者はクラシックなスタイル、後者はモダンなスタイルで書かれた作品だが、変奏曲という共通項でくくられている。

 指揮者としてのホリガーは、近年シューベルトに集中的に取り組んできた。今回の水戸室内管との共演では、2曲の未完成交響曲を指揮する。ひとつは「アンダンテ ロ短調」。スイスの作曲家ローラント・モーザーがシューベルトの最晩年のスケッチにオーケストレーションを施している。もうひとつは、もちろん、交響曲第7番「未完成」。ホリガーの視点で作品のあるべき形を問い直した清新な「未完成」が披露されることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年10月号より)

2023.10/21(土)、10/22(日)各日15:00 水戸芸術館コンサートホールATM
問:水戸芸術館 チケット予約センター029-231-8000
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