トマ・オスピタル(オルガン)

若き実力者による柔らかく荘厳な調べ

(c)Céline Nieszawer

 輝かしいコンクール受賞歴を持ち、若くしてパリ国立高等音楽院教授に就任したフランスのオルガニストのトマ・オスピタル。現在もっとも注目されている奏者が9月に来日し、第9回武蔵野市国際オルガンコンクールの審査をつとめるほか、神奈川県民ホール小ホールで待望のリサイタルを開催する。

 「オルガンとの出会いは10歳の時です。合唱で歌っている父についていったとき、オルガンの演奏を初めて聴き、その壮麗な音色に衝撃を受けました。『弾いてごらん』と言われたのですが、もちろん音など出したことはなかったので、弾けずにいました。するとオルガン奏者が、私の手をとって、音を鳴らしてくれたのです。それ以来、ずっとこの楽器の魅力に取り憑かれています」

 パリ国立高等音楽院でオリヴィエ・ラトリー、日本でも人気の奏者で作曲家でもあるティエリー・エスケシュらに学んだ。

 「エスケシュ先生には7年ほど師事しており、私の音楽家としての人生に多大な影響をもたらしました。とても寛大で尊敬できる人柄ですし、作品も素晴らしいので、しばしばコンサートで取り上げています。今回は彼の『エヴォカシオン Ⅳ』を弾く予定です。モダンで明るく、力強さもある曲です」

 プログラムはバッハとフランス近代作品を組み合わせた洒脱なものだ。

 「楽器の特性も考慮しながら選曲しました。神奈川県民ホールのオルガンはさまざまなレパートリーと相性がいいと思いますので、コンサートは二部構成になります。前半は、バッハの『前奏曲とフーガ BWV552』やコラール・パルティータなどのクラシカルなオルガン作品を弾きます。
 そして後半は近現代のレパートリーとして、20世紀、21世紀のフランス音楽をとりあげます。エスケシュの『エヴォカシオン Ⅳ』、ジャン・アランの『幻想曲』第1番、第2番、そしてメシアンの『主の降誕』からの抜粋です。メシアンは素晴らしいオルガン奏者でもあり、とりわけ自作を弾く彼の演奏はとても興味深いものですね。私たちは楽譜に忠実にと考えますが、メシアンはかなり自由な自作自演を展開しており、その自在さも大きな魅力です。今回は、フランスの伝統である即興演奏も披露する予定です」

 今回で来日は3度目になる。

 「日本を訪れるのは毎回非常に素晴らしい体験です。日本文化にみられる秩序だてられた部分や繊細さなどにもとても魅了されます。神奈川県民ホールの素晴らしい楽器の響きを、日本のオルガンファンのみなさまにお届けできるのを心待ちにしています」
取材・文:伊藤制子
(ぶらあぼ2023年9月号より)

C × Organ オルガン・コンサート・シリーズ トマ・オスピタル オルガン リサイタル
2023.9/8(金)19:00 神奈川県民ホール(小)
問:チケットかながわ0570-015-415 
https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/