第537回日経ミューズサロン ニコラ・バルディルー クラリネット・リサイタル

フランス放送フィル首席奏者の妙技を愉しむ一夜

 名人上手がひしめくクラリネット界でも、トップ・プレイヤーとして真っ先に名前のあがる一人。それが1979年生まれのニコラ・バルディルーだ。

 ARDミュンヘン国際コンクールをはじめとする受賞歴とともに、彼は二十歳そこそこでソロ活動を開始した。2004年には世界屈指の楽器メーカー、ビュッフェ・クランポンからテスターに招かれる。リヨン国立音楽院の教授に就任したのが06年。11年からはフランス放送フィルの首席奏者。こんな経歴以上の凄さを実感できるのが、YouTubeで多数公開されている演奏だろう。身震いを誘うテクニックの冴え。品格の高い歌心。多重録音で複数パートをこなした動画などは、あまりの完成度の高さに唖然としてしまう。

 ピアノの佐々井佑子とともに日経ホールで開くリサイタルは堂々たる選曲。シューマンやブラームス、そしてサン=サーンスやプーランクが残した、クラリネット作品の頂点に位置する音楽が、まさにそんな姿を得て鳴り響く。管楽器ファン以外にも必聴の一夜である。
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2023年8月号より)

2023.8/25(金)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
https://stage.exhn.jp