ハイドン・フィルハーモニー 2023

イタリアの鬼才オノフリが振る「ハイドン」の佳品の数々

 「パパ・ハイドン」と親しみを込めて呼ばれるヨーゼフ・ハイドンが活躍したアイゼンシュタット(現オーストリア)にあるハンガリー系貴族エスターハージ家が居を構えたエスターハージ城は、ハイドンの生きた18世紀の面影を残す。城内の「ハイドン・ザール」を本拠地として1987年に結成されたハイドン・フィルハーモニーは、ウィーン・フィルのメンバーをはじめとしてオーストリア、ハンガリーなどの俊英演奏家を集めて活動を続けている。創設指揮者であるアダム・フィッシャー、次いでニコラ・アルトシュテットが芸術監督を務めてきたが、2022年からはアルトシュテットに加え、イタリア・バロック界の鬼才エンリコ・オノフリがアーティスティック・パートナーとなり、さらに注目を集めている。

 そのオノフリ指揮によるハイドン・フィルの公演が6月から7月にかけて日本で開催される。まず東京(東京オペラシティ)、愛知、大阪の3公演は、元ベルリン・フィルの首席トランペット奏者ガボール・タルケヴィとウィーン・フィルの首席フルート奏者ワルター・アウアーが加わって、ハイドンのトランペット協奏曲、モーツァルトのフルート協奏曲第2番、そしてベートーヴェンの交響曲第5番「運命」が演奏される。それぞれの協奏曲におけるソリストの妙技にも期待が高まるが、オノフリが指揮するベートーヴェンも、この優れたオーケストラからどんな表情を引き出すか、興味が尽きない。

 さらにはオノフリ指揮ハイドン・フィル単独で、ハイドン兄弟(ヨーゼフと弟ミヒャエル)の交響曲、ベートーヴェンの「運命」を並べたコンサート(6/27)もある。そして注目の日本人ソリストと共演する2公演も用意された。ウィーンで学び、2017年にブラームス国際コンクールで日本人として初優勝した中村太地はベートーヴェンの傑作、ヴァイオリン協奏曲に挑む(7/1)。そして、モダン・ピアノだけでなく歴史的ピアノの研究、演奏でも知られる久元祐子とは愛称「ジュナミ」で知られるモーツァルトのピアノ協奏曲第9番を共演する(7/2)。

 実力あるソリストを迎えて、古典派中心のプログラムで展開される今回のハイドン・フィルのツアーは、初夏の日本に鮮烈な印象を残すだろう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2023年5月号より)

2023.6/27(火)19:00 浜離宮朝日ホール
6/29(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
6/30(金)19:00 愛知/刈谷市総合文化センター アイリス
7/1(土)、7/2(日)各日14:00 紀尾井ホール
7/4(火)14:00 大阪/住友生命いずみホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
  住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188(7/4のみ)
https://www.proarte.jp
※プログラムにより出演者が異なります。公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。