藤岡幸夫、山田和樹、鈴木優人、原田慶太楼の4人がそろい踏み
New Classic by 4 Conductors 受賞記念コンサート リハーサルレポート Vol.1

 クラシックの新しい時代を切り拓くプロジェクト「New Classic by 4 Conductors」の受賞記念コンサート(5/15)が目前に迫った。5月13日、14日の2日間、都内で行われるリハーサルを取材する。
 このプロジェクトは、日本のクラシック界をリードする指揮者、藤岡幸夫、山田和樹、鈴木優人、原田慶太楼という4人が、オーケストラの新作を生み出すというプロジェクト。
 「作曲家達に新しい音楽を発表する場を作り、長く愛され続ける僕らの時代の曲を残したい」という彼らの思いのもと、繰り返し演奏されることを目指す作品を募集したところからはじまった。そして応募44作品の中から指揮者4人による譜面審査と話し合いにより受賞作品が決定。5月15日、東京オペラシティ コンサートホールで、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、愛知室内オーケストラの管弦楽で披露される。公演後には、日本コロムビアがCD化、全音楽譜出版社が楽曲管理と楽譜出版、ユニバーサル・エディションのオンライン楽譜提供サービス“scodo”を通じ全世界でスコアの閲覧と販売、BSテレ東『エンター・ザ・ミュージック』での放送など、あらゆるメディアを通してこれらの作品を後押ししていく。

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、愛知室内オーケストラによる合同オーケストラ

 多忙なスケジュールをこなすこの4人が、本番の1日だけでも一堂に会するのは奇跡なことに思えるが、なんとリハーサルにも全員立ち会うという! このプロジェクトにかける4人の思いが伝わってくる。

山田和樹のリハーサルを見守る、原田慶太楼(左)と鈴木優人(右)

 13日のリハーサル初日、指揮者3人の視線を浴びる中まず指揮台に立ったのは山田和樹。曲は山田竜雅作曲、「《祈り》〜⼥声と管弦楽のための〜」。山田はこの作品に「現代音楽の要素も多分に含みながらもスコアが大変に美しい。日々数多く生まれている現代音楽の中でも再演に恵まれる作品に共通しているのは、やはりスコアの美しさだと思う」とメッセージを寄せている。作曲の山田竜雅は、「『音楽とは何か』を自分自身に問いかけて、見つけた答えを表現した。その答えに、誰か1人でも共感してくれたら幸せ」とコメント。ソプラノの安江陽奈子も加わる2部構成、透明感がある美しい作品。

左:山田竜雅 右:山田和樹

 続いての登場は原田慶太楼。曲は、城代悠子の 「IKUSA」。「城代さんの作曲には幸せを運ぶハーモニーとメロディー、リズミック・エネルギーがある。聴いている方に楽しさとワクワク感を感じさせてくれる魔法使い」と原田。城代は自身の作品に「『IKUSA』は人間が戸惑いや葛藤を抱えながら、様々な困難と戦っていく様子を表現した。ラヴェルなど近代クラシック作曲家の響きを取り入れ、且つ現代のゲーム音楽など、若い人にも親しみやすい曲として制作した」と語る。ふたりのコメント通り親しみ深いメロディーに躍動するリズムが加わり駆け抜けていく。原田の快活な指揮姿も曲のイメージに重なる。

左:城代悠子 右:原田慶太楼

 3人目は鈴木優人、萩森英明作曲「東京夜想曲」。鈴木は「すでに各方面で活躍している萩森さんは、今回のプロジェクトに向けて新しいコンセプトで、まさに『東京らしい』音楽を作曲された」と語る。萩森は自身の作品を「私の生まれ育った街、東京の夜をテーマに、常に変化し続ける街を色彩豊かに描いた」と紹介。「夜想曲」の名にふさわしい叙情的な雰囲気で始まり、徐々に都会の持つ様々な表情が語られていく。

鈴木優人

 ラストは、藤岡幸夫指揮による松井琉成作曲「交響詩《うつしがたり〈翠〉》」。藤岡曰く「とても若々しく、華やかなオーケストレーションと豊かな旋律で不思議な世界が目に浮かぶような魅力的な作品」。松井は「植物が歩いたり物がしゃべったりする不思議な別世界にたどり着いてしまった⻘年。鏡を通して眺められる現実世界の悲惨さから目を背けて穏やかな生活を満喫する青年でしたが、その別世界もやがて暗黒に支配されそうになり…」とイメージを語っている。実際、様々なキャラクターが次々と表れて物語に引き込まれていくファンタジーあふれる作品。

左:松井琉成 右:藤岡幸夫

 4作品通していわゆる“ゲンダイオンガク”という難解な音楽ではない。かといって「聴きやすい」と簡単に括れるようなライトなものではなく、オーケストラ作品として十二分な聴き応え。さらに4人の指揮者がそれぞれの個性にふさわしい作品をセレクトしているからか、初めて聴いたとは思えない親密さを伴っている。
 明日はリハーサル2日目。本番に向けてどのような仕上がりになっていくのか!?レポート続編をお楽しみに!

「ニュークラシックプロジェクト」受賞記念コンサート
New Classic by 4 Conductors

2023.5/15(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

出演/藤岡幸夫、山田和樹、鈴木優人、原田慶太楼(以上指揮)、安江陽奈子(ソプラノ)
   東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、愛知室内オーケストラ
曲目/城代悠子:IKUSA
   山田竜雅:「祈り」〜⼥声と管弦楽のための〜
   松井琉成:交響詩「うつしがたり〈翠〉」
   萩森英明:東京夜想曲 
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp