望みうる最上の組み合わせが5年ぶりに実現
弦楽器の最高峰として君臨する銘器、ストラディヴァリウス。イタリアのクレモナの伝説的な楽器製作者アントニオ・ストラディヴァリが17世紀後半から18世紀前半にかけて製作した弦楽器は、数百年の時を超えた現代も世界中の音楽家やコレクターたちにとって垂涎の的となっている。
そんなストラディヴァリウスの銘器が一堂に会するのが、「第13回 ストラディヴァリウス サミット・コンサート 2023」。総額100億円ともいわれる11台の銘器によるアンサンブルが実現する。しかも演奏するのはベルリン・フィルの名手たちだ。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスにチェンバロが加わって、13人編成からなるベルリン・フィルハーモニック・ストラディヴァリ・ソロイスツが組まれる。メンバーは第1ヴァイオリンのアレクサンダー・イヴィッチ、第2ヴァイオリン首席奏者のクリストフ・ホラーク、ヴィオラ奏者のヴァルター・キュッスナー、首席チェロ奏者のオラフ・マニンガー、第1ソロ・コントラバス奏者のヤンネ・サクサラ他。
ストラディヴァリウスといえばヴァイオリンの銘器という印象が強いが、実はヴィオラやチェロにもストラディヴァリウスがある。ただ、数の上では圧倒的にヴァイオリンが多い。逆にいえばヴィオラやチェロのストラディヴァリウスはヴァイオリン以上に稀少な存在ということになる。今回出演するヴィオラ奏者のマシュー・ハンターは「10台ほどしか存在しないストラディヴァリウスのヴィオラを弾く機会は、自分にとってこのコンサートだけ」と語っている。ストラディヴァリウスのヴァイオリン独奏を聴く機会はたびたびあっても、ストラディヴァリウスによる弦楽合奏を聴く機会がめったにないのは、ヴィオラやチェロの稀少性ゆえでもある。
今回の公演では、A、B、C、3つのプログラムが用意される。それぞれストラディヴァリウスの音色を存分に味わえるような名曲がとりそろえられている。
Aプログラムはバロックの協奏曲が中心となる。ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」はイタリアの銘器にふさわしい選曲だろう。これに同じくヴィヴァルディの「2つのチェロのための協奏曲 RV531」、バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲 BWV1043」、そしてモーツァルトのディヴェルティメント ニ長調 K.136(125a)が加わる。
Bプログラムはロマン派中心の選曲だ。チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」では、ストラディヴァリウスの音色をたっぷりと味わえるはず。さらにグリーグの組曲「ホルベアの時代より」、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」、モーツァルトのディヴェルティメントが演奏される。
Cプログラムはバラエティに富んでいる。バッハ、テレマン、ヴィヴァルディらバロックの協奏曲、チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」、マスネの「タイスの瞑想曲」、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」といった名曲が集められた。
最高の奏者たちが最高の銘器を奏でる。いったいどんな音色が響くのだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年4月号より)
【Aプログラム】
2023.5/30(火)19:00 サントリーホール
【Cプログラム】
5/31(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
【Bプログラム】
6/3(土)19:00 サントリーホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
http://www.pacific-concert.co.jp
他公演
5/24(水) 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール(KTS鹿児島テレビ099-285-8966)
5/25(木) 福岡シンフォニーホール(092-725-9112)
5/26(金) 山口市民会館(083-920-6111)
5/28(日) 大阪/フェスティバルホール(キョードーインフォメーション0570-200-888)
5/29(月) 愛知県芸術劇場 コンサートホール(東海テレビ放送事業部052-954-1107)
6/1(木) 横浜みなとみらいホール(045-682-2000)
6/2(金) 長野/ホクト文化ホール(NBS長野放送事業部026-227-3000)
6/4(日) 福島/けんしん郡山文化センター(福テレ音声ガイド024-536-8011)