アンナ・ラキティナ(指揮) 読売日本交響楽団

欧米で注目浴びる若き指揮者が日本デビュー

 期待の新星が日本デビューを飾る。初登場となる指揮者、アンナ・ラキティナは、ウクライナ人の父とロシア人の母の間にモスクワで生まれた33歳。2018年、ニコライ・マルコ国際指揮者コンクール第2位に入賞して注目を浴びた。現在は、ネルソンス率いるボストン交響楽団で副指揮者を務めている。

 彼女がプログラムの最初に取り上げるのは、エレナ・ランガーによる歌劇《フィガロの離婚》組曲だ。今回が日本初演になる。この組曲のもとになった歌劇は、モーツァルトのオペラの続編として書かれ、ウェールズ・ナショナル・オペラで2016年に初演後、ヨーロッパ中で再演されている話題作だ。ロシア生まれで英国で活躍するランガーは、歌劇作曲家として人気沸騰中。喜劇や川端康成を原作とした作品も手がけている。

 続いて、ルノー・カプソンを迎えてのベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」。当世一のテクニシャンで、濃い口で官能性豊かに歌うカプソンが、若き指揮者が振る読響といかなる化学反応をみせてくれるか。

 そして、チャイコフスキーの交響曲第1番。「冬の日の幻想」というタイトルをもち、作曲者最初の交響曲ならではのバイタリティに満ちた作品だ。この曲の特色でもある旋律美をラキティナは、繊細に、そして広がりをもって歌わせるのではないか。意欲的なプログラムでデビューする若き指揮者の手腕に期待したい。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年2月号より)

第625回 定期演奏会 
2023.2/22(水)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp