オルガンとバロック・アンサンブルの新鮮な出会い
神奈川県民ホールの小ホールでコンサートを体験された方はご存知のように、433席の小さめのホール舞台正面にはパイプオルガンが設置されている。1975年のホール開館時にドイツのクライス社製のオルガンが舞台右側に置かれたが、1990年に舞台正面に移され、長く使われてきた。2021年に神奈川県民ホールのオルガン・アドバイザーに就任したオルガニストの中田恵子が、新しく「オルガン avec」シリーズをスタートさせることになった。その記念すべき第1回の公演はバロック・アンサンブルとの共演である。
「パイプオルガンというと大ホールに設置されているものがほとんどで、神奈川県民ホールの小ホールのように比較的小さな空間にパイプオルガンがあるというのはとても珍しいことです。この空間を使って、オルガンの個性を活かしたコンサートをできないかなと考えた時に思いついたのが、今回の企画でした」
と中田は語る。長岡聡季、大光嘉理人(以上ヴァイオリン)、吉田篤(ヴィオラ)、エマニュエル・ジラール(チェロ&ヴィオラ・ダ・ガンバ)、西澤誠治(コントラバス)という5人のピリオド弦楽器奏者を迎え、ヘンデルのオルガン協奏曲第4番をはじめ、J.S.バッハのチェンバロ協奏曲第4番、ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番、ヴァイオリン・ソナタ ホ短調、そしてモーツァルトの教会ソナタなどを含んだ魅力的なプログラムを披露する。
「バッハの時代には、教会のパイプオルガンを演奏するバルコニーにオルガン奏者と弦楽器奏者が集まって室内楽的な作品を演奏していたようで、そうした雰囲気を小ホールの親しみやすい空間で味わっていただけたらと思って、プログラムを考えました。ヘンデルのオルガン協奏曲は以前から演奏してみたい作品でしたし、オルガンの独奏曲もあり、弦楽器とオルガンの様々な組み合わせもありで、編成の違いによる音の多彩さも楽しんでいただきたいです」
パイプオルガンというのは製作者によっても個性がかなり違う楽器。この小ホールはクライス社製だが、その特徴を中田はこう表現する。
「ちょっと武骨だけれど、シャイなところもある人、のようなイメージがあります。もちろん弾く方によってもイメージが変わってくると思いますが。この小ホールは舞台正面、間口いっぱいに楽器が置かれているので、より身近にオルガンの音を楽しめると思います」
新しいシリーズに注目しよう。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2023年2月号より)
C × Organ オルガン・コンサート・シリーズ
オルガン avec バロック・アンサンブル
2023.2/11(土・祝)15:00 神奈川県民ホール(小)
問:チケットかながわ0570-015-415
https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/