ヨス・ファン・フェルトホーフェン合唱団 第一回演奏会 ハイドン「天地創造」

古楽界の名匠を迎えた新プロジェクトが始動

 2022年3月、前オランダ・バッハ協会芸術監督のヨス・ファン・フェルトホーフェンを音楽監督に迎えた新しい合唱団が誕生した。公募によって集まった100人から成るアマチュア合唱団で、その名もヨス・ファン・フェルトホーフェン合唱団(通称「ヨスコア」)。オランダ古楽界の名匠を毎年招き、5ヵ年計画で合唱のための大作を取り上げようという大規模なプロジェクトである。

 ファン・フェルトホーフェンは2018年まで名門オランダ・バッハ協会を35年にわたって率いた古楽界・合唱界の重鎮。現在は、アムステルダムおよびハーグの音楽院の教授として後進の指導にあたるほか、各地の合唱団より客演指揮者として招かれている。彼の指導力に惚れ込み、本プロジェクトを立ち上げたのは、「カルミナ・ブラーナ」などの上演で知られる合唱舞踊劇O.F.C.を長年にわたって主宰した柴大元(企画・制作)である。

 記念すべき第1回のコンサート(2023.2/19、東京オペラシティ コンサートホール)のためにファン・フェルトホーフェンが選んだのは、ハイドンの晩年の傑作オラトリオ「天地創造」。オランダ・バッハ協会の芸術監督就任25周年の節目にも取り上げた、彼にとって思い入れのある作品だ。まさに新しい合唱団の門出にふさわしい演目とも言えるし、ここ数年、コロナ禍において困難な状況にあった合唱界を、ハイドンの希望に満ちた力強い音楽によってリセットしたいという願いも込められているように感じる。

 なお、ヨスコアの2027年までの演目はすでに決まっており、24年にはメンデルスゾーン「エリアス」、25年はブラームス「ドイツ・レクイエム」、26年はモーツァルト「ハ短調ミサ」とバッハの「マニフィカト」、そして27年には同「ヨハネ受難曲」が予定されている。回を重ねるごとにコラボレーションがどう深まっていくのかも楽しみだ。

 「天地創造」の合唱練習はすでに22年春から開始しており、指導は内外の指揮者たちの厚い信頼を受けている合唱指揮の山神健志が行っている。先日(12/16)には試演会も行うなど、2月の本番に向けて志気が高まっている。

 管弦楽は、2021年に誕生したばかりのレ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ。オーボエの三宮正満とホルンの福川伸陽が発起人として結成した、管楽器のトップ・プレイヤーを中心に活動を展開する気鋭のピリオド楽器アンサンブルだ。

 そして、「天地創造」のストーリーテリングにおいて重要な役割を果たす3人の独唱者には、バッハ・コレギウム・ジャパン等でソリストを務めるソプラノの松井亜希(天使ガブリエル/イヴ)、とりわけ古楽のレパートリーを得意とするテノール櫻田亮(天使ウリエル)、そして数々のオペラの舞台や演奏会のソリストとして活躍するバリトンの与那城敬(天使ラファエル/アダム)を迎える。技巧を凝らした華やかな独唱もオラトリオの大きな聴きどころといえよう。

 こうした全員の力を名匠ヨス・ファン・フェルトホーフェンがどうまとめ上げ、東京で「天地創造」にどんな新しい命が吹き込まれるのか、期待が高まる。
文:後藤菜穂子
(ぶらあぼ2023年1月号より)

2023.2/19(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ヨスコア事務局03-3367-2451 
https://www.joschor.com