東京文化会館 舞台芸術創造事業 デヴィッド・ラング《note to a friend》

芥川龍之介作品を題材とした新作オペラの日本初演

 「おちついてきけるんですよね。メロディがある。キッチュな音がでてこなくて、安心してきいていられる。アグレッシヴな現代(ゲンダイ)音楽(オンガク)ではない」

 オペラ《note to a friend》演出の笈田ヨシは、作曲のデヴィッド・ラングの音楽の印象をこう語ってくれた。

 歌い手=演戯者はひとり、小編成のアンサンブル、室内楽に適したホール。そうした空間のなか、死者という停止した時間にいるものの語りがつづく。テクストは芥川龍之介。作曲家じしんが選び、組みあわせた3つのテクストが、紡がれる。「デス・スピークス」や「マッチ売りの少女の受難曲」などを発表し、死は重要なテーマだし関心を持っているというラングは、こう語る——

 「音楽は音楽そのものがミステリー=神秘だ。音楽を感じることはできるが、なにものなのか完全に知ることはできない。わかりきらないものを表現するのに、音楽はひじょうにいいんじゃないか。わたしたちがどこへ行くのかという、こたえのない、難しい問いが、わたしの好きなテーマにかかわると言ったらいいのかもしれない」

 現在の生活環境では、死があらわれるのは、情報としてばかり。身近な者いがいには遠ざけられ、希薄化される。でも、わたしたちは誰もが否応なく死すべきものとしてある。その不思議さを、芥川龍之介=デヴィッド・ラングは、笈田ヨシのつくる空間でたちあげる。

 笈田ヨシはこうも言っていた——

 「いちばんみていて飽きないのは人間なんですよ、ぼくにとって」
文:小沼純一
(ぶらあぼ2023年1月号より)

2023.2/4(土)、2/5(日)各日15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp