奥行きのある多彩なチェロの響きを味わう
同じ楽器による合奏のなかで、もっともバランスよく成立して楽しみやすいのはチェロのアンサンブルだろう。基本的には低音の楽器だが、高音域の旋律も輝きをもって奏でられるチェロは、あらゆる声部を受け持てるし、独特の艶のある音色の美しさも格別。なかでも迫力と色彩感が魅力の12人編成の団体は日本では貴重で、その代表的存在が「タンタシオン・デ・ブルー」である。
団体名の“tentation de bleue”は「“あお”のいざない」という意味で、「高貴で神聖な色とされる“あお”の世界観を表現できるアンサンブル」とのこと。率いるのは幅広い活動で第一線を走り続ける海野幹雄。中堅の名チェリストであり、音楽家たちの敬意を集める存在でもある。今回のメンバーは海野、西山健一、北口大輔、三森未來子、玉川克、髙橋麻理子、灘尾彩、西牧佳奈子、黒川実咲、加藤文枝、武井英哉、川岡光一。ソリストやオーケストラの中心奏者、指導者など様々な立場の12人が豊かなハーモニーを作りあげる。大分公演の曲目は、クレンゲル「讃歌」といった定番名曲から、ソッリマ「チェロよ歌え!」、新垣隆「ポエム」など現代作曲家の楽曲に、「荒城の月」など日本の歌(三枝成彰編)まで多彩なプログラム。
また、公演3日前には関連企画として「通奏低音レクチャー」が開かれる。バロック音楽の「通奏低音」って何? という疑問をテーマに、海野がチェロ四重奏の実演を交えながらその意味や重要性を紐解いていく。ぜひとも本公演と併せて体験したい。
文:林昌英
(ぶらあぼ2023年1月号より)
【本公演】
2023.2/5(日)14:00 大分/iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ
【関連企画】通奏低音レクチャー
2/2(木)19:00 大分/iichiko総合文化センター iichiko SpaceBe リハーサル室
問:iichiko総合文化センター097-533-4004
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