旬の若手がフレッシュな感性で紡ぐロマン派の名曲
高崎芸術劇場芸術監督の大友直人のプロデュース公演「T-Shotシリーズ」は、「才能あふれる若手演奏家を様々な角度から紹介する」名物シリーズ。音楽ホールでのリサイタル開催とCD&DVDの制作がセットとなっているのが大きな特徴で、いまや俊才たちの登竜門的な存在となっている。
12月に登場するのはヴァイオリンの東亮汰。桐朋学園大学2年生だった2019年の第88回日本音楽コンクール優勝で注目を集め、多くの公演やテレビ番組に出演を重ねており、10月にはEテレで来春放送予定のアニメ『青のオーケストラ』主人公の演奏を担当することが発表されたばかり。東の繊細かつセンスあふれる演奏には聴く人を一瞬で捉えてしまう不思議な魅力があり、最近の活躍や抜擢も大いにうなずけるし、リサイタルはその実力を広く示す好機となる。また、第7回トビリシ国際ピアノコンクールで最高位(第2位)に入賞したばかりの尼子裕貴が出演するのも注目で、ピアノパートも難曲ぞろいの本公演で旬の名技を体験できる。
演目はR.シュトラウスとフランクの名ヴァイオリン・ソナタを前後半のメインに据えて、クライスラー「前奏曲とアレグロ」、サン゠サーンス「死の舞踏」という鮮烈な小品のほか、20世紀の名指揮者ジャン・マルティノン作曲の魅力的な佳品「無伴奏ヴァイオリンのためのソナチネ第5番」が選ばれているのも目を引く。強い意欲が伝わるプログラムで、いまの東が奏でる2大ソナタは特に楽しみだし、勢いに乗る俊英たちの共演にも期待がふくらむ。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年12月号より)
2022.12/24(土)13:30 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/