びわ湖ホール次期芸術監督の阪哲朗が語る開館25周年シーズンの聴きどころ

 びわ湖ホールが11月28日、令和5年度(2023年4月〜24年3月)のラインナップ記者発表会を同ホール内でおこない、次期・第3代芸術監督の阪哲朗(2023年4月〜)、館長の村田和彦、総括プロデューサーの舘脇昭が出席した。

左より:村田和彦館長、阪哲朗次期芸術監督、舘脇昭総括プロデューサー 提供:びわ湖ホール

 2023/24シーズンにかけて同ホールでは、大中小の3ホール合わせて、有料公演の31事業55公演、普及事業の14事業91公演、全部で146公演を実施する。オペラ公演に絞ると、大ホール4演目5公演、中ホール2演目10公演、県内ホール等をまわる約20公演を展開する。

 昨年4月から芸術参与に就任している阪は、京都市出身。ドイツを中心にヨーロッパ各地で40以上のオーケストラ、歌劇場に招聘され、これまでビール市立歌劇場(スイス)、ブランデンブルグ歌劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパーで指揮者のポストに就き、アイゼナハ歌劇場およびレーゲンスブルク歌劇場の音楽総監督を歴任。国内では新国立劇場、二期会、主要オーケストラでタクトを執るほか、山形交響楽団では首席客演指揮者を経て現在、常任指揮者を務めている。
 「初の地元出身の芸術監督ということで、嬉しいご縁を感じています。関西を盛り上げてびわ湖ホールがオペラの中心になっていくことを目指し、“ここに劇場があって良かった”と思っていただけるような場所にしていきたい。ドイツやスイスの歌劇場で培ってきた長年の経験を反映させて、“世界のスタンダード”を視野に入れて今後のプロジェクトを展開していく」と、今回の芸術監督就任への決意を述べた。

提供:びわ湖ホール

 びわ湖ホールは1998年の開館以来、ホール独自の創造的なオペラ制作を続けてきた。その核となる企画「プロデュースオペラ」で阪が最初に取り上げるのは、R.シュトラウスの《ばらの騎士》(2024.3/2, 3/3)。同ホールでは2007年に初めて取り上げ、プロデュースオペラとしては4年ぶりの上演となる。「沼尻さんも最初の年が《ばらの騎士》で、15年を経て、私も《ばらの騎士》でスタートできることが楽しみ」と阪は意気込む。演出は中村敬一、管弦楽は京都市交響楽団。キャストはダブルキャストで、森谷真理/田崎尚美、妻屋秀和/斉木健詞ら国内を代表する歌手が集結する。総括プロデューサーの舘脇は、「前回はびわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバーは一人も出演しませんでしたが、今年は山際きみ佳をはじめとする7名が出演。これが2016〜17年の成果のひとつだと思っている」と人材育成の取り組みの手応えを述べた。
 2017年の藤原歌劇団との《ノルマ》以来6年ぶりの実施となる「共同制作オペラ」シリーズでは、東京芸術劇場、やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)と連携し、オペレッタを得意とする阪の指揮でJ.シュトラウスII《こうもり》を上演する(2024.11/19)。演出を手がけるのは、今回がオペラ初演出となる野村萬斎。野村は、同ホール開館を祝して「三番叟」を舞い、以降毎年狂言公演に出演し、開館15周年には「MANSAI ボレロ」を舞うなど、びわ湖ホールとのゆかりが深い。オーケストラは日本センチュリー交響楽団、歌手陣は福井敬を筆頭に、山下浩司、藤木大地、与儀巧、幸田浩子らといった顔ぶれだ。

 2023年に開館25周年を迎えるびわ湖ホール。周年記念事業としては、阪による指揮&京響、石橋栄実、藤木大地、宮里直樹、びわ湖ホール声楽アンサンブルらが出演するオペラ・ガラ・コンサート等を予定(2023.9/17)。2020年より始まった「マーラー・シリーズ」の第4弾では現芸術監督の沼尻竜典が継続して指揮を務め、京響と共に交響曲第7番を披露する(8/26)。
 例年、春に開催してきた音楽祭は、2018年度から22年度にかけては「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」という名称で行われてきたが(沼尻のプロデュース)、2023年からは阪のプロデュースのもと「びわ湖の春 音楽祭」として新たにスタートする。初回は、“ウィーンの風”がテーマ(2023.4/29, 4/30)。指揮の鈴木優人、田中信昭、京響、日本センチュリー響、サクソフォンの上野耕平、ソプラノの中嶋彰子、カウンターテナーの藤木大地をはじめとした、一流の音楽家による公演を気軽に楽しめる2日間となる。

 そのほか、バイロイト音楽祭などで主役級の役を務める世界的メゾソプラノの藤村実穂子が、びわ湖ホールに初登場し、マーラー、モーツァルトの歌曲を披露。また、初心者からオペラを楽しめるシリーズ「オペラへの招待」では、「アンサンブルを鍛えるにあたってモーツァルトは特に重要」と語る阪の指揮、びわ湖ホール声楽アンサンブルのキャストで《フィガロの結婚》が上演される。共催事業として、3年にわたる延期を経て6年ぶりの来日となるパレルモ・マッシモ劇場のプッチーニ《ラ・ボエーム》(6/22)、ボローニャ歌劇場のベッリーニ《ノルマ》(11/11)など、海外歌劇場の公演も予定されている。

提供:びわ湖ホール

 2023年3月をもって退任が決定している沼尻には、桂冠芸術監督の称号が贈られる。開館25周年という節目に始動する阪哲朗の新たな時代。「継承だけでなく、進化させていく」と目標を掲げるその手腕に期待したい。

令和5年度 主な公演スケジュール

びわ湖ホール声楽アンサンブル第77回定期公演 「言葉とともに」
2023.4/22(土
) びわ湖ホール 大ホール
田中信昭(指揮)
中嶋香(ピアノ)
♪ハイドン:オラトリオ「天地創造」より 他

びわ湖の春 音楽祭 2023
【テーマ:ウィーンの風】
2023.4/29(土・祝)、4/30(日) びわ湖ホール 大ホール・小ホール

阪哲朗、鈴木優人、田中信昭(指揮)
京都市交響楽団、日本センチュリー交響楽団
玉井菜採(ヴァイオリン)
上村昇(チェロ)
梯剛之、上野真、中嶋香、北端祥人(以上ピアノ)
上野耕平(サクソフォン)
中嶋彰子(ソプラノ)
藤木大地(カウンターテナー)
びわ湖ホール声楽アンサンブル 他

ウィーン・アーロン・カルテット
2023.5/27(土) びわ湖ホール 小ホール


〈大人の楽しみ方34〉 鈴木大介(ギター)&北村 聡(バンドネオン)
2023.5/28(日) びわ湖ホール 小ホール


びわ湖ホール 音楽会へ出かけよう!
2023.6/3(土) びわ湖ホール 大ホール

阪哲朗(指揮)
京都市交響楽団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
中村敬一(脚本・構成)

パレルモ・マッシモ劇場 プッチーニ 歌劇《ラ・ボエーム》
2023.6/22(木) びわ湖ホール 大ホール

TAIRIKプロデュース 古澤巖の品川カルテット
2023.6/29(木) びわ湖ホール 大ホール

古澤巖、福田悠一郎(以上ヴァイオリン)
TAIRIK(ヴィオラ)
高木慶太(チェロ)
♪ロベルト・ディ・マリーノ作品 他

〈びわ湖ホール名曲コンサート〉 華麗なるオーケストラの世界 vol.6
2023.7/17(月・祝) びわ湖ホール 大ホール
喜古恵理香(指揮)
日本センチュリー交響楽団

林康子 声楽曲研修
2023.7/21(金)〜7/23(日) びわ湖ホール 小ホール

受講者:びわ湖ホール声楽アンサンブル

びわ湖ホール声楽アンサンブル「美しい日本の歌」
2023.8/5(土) びわ湖ホール 大ホール

本山秀毅(指揮)
びわ湖ホール声楽アンサンブル
京都フィルハーモニー室内合奏団

びわ湖ホール声楽アンサンブル「美しい日本の歌」米原公演
2023.8/12(土) 文化産業交流会館 イベントホール内特設舞台「長栄座」

本山秀毅(指揮)
びわ湖ホール声楽アンサンブル
京都フィルハーモニー室内合奏団

沼尻竜典 × 京都市交響楽団 マーラー・シリーズ マーラー作曲 交響曲第7番
2023.8/26(土) びわ湖ホール 大ホール

沼尻竜典(指揮)
京都市交響楽団

阪 哲朗 オペラセミナーI
2023.8/28(月)〜8/31(木) びわ湖ホール 大ホール

受講者:プロを目指す若手音楽家
大阪交響楽団

スタインウェイ“ピノ”シリーズ vol.9
日本語とうた 〜言葉としての日本語、そして日本のうた〜 木下牧子と信長貴富

2023.9/2(土) びわ湖ホール 小ホール
河原忠之(構成・解説・ピアノ)
びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー(船越亜弥、山際きみ佳、山本康寛、迎肇聡)

〈びわ湖ホール名曲コンサート〉 田村響 ピアノ・リサイタル
2023.9/3(日) びわ湖ホール 中ホール


ヴェロニカ・エーベルレ ヴァイオリン・リサイタル
2023.9/9(土) びわ湖ホール 小ホール

ヴェロニカ・エーベルレ(ヴァイオリン)
山田武彦(ピアノ)

開館25周年記念事業
2023.9/17(日) びわ湖ホール 大ホール

阪哲朗(指揮)
石橋栄実、藤木大地、宮里直樹、びわ湖ホール声楽アンサンブル 他
京都市交響楽団

平和堂財団 〜鳩の音楽会2023〜
2023.9/24(日) びわ湖ホール 中ホール


〈特別コンサート〉 藤村実穂子 メゾソプラノ・リサイタル
2023.9/30(土) びわ湖ホール 大ホール

藤村実穂子(メゾソプラノ)
ヴォルフラム・リーガー(ピアノ)
♪マーラー:さすらう若人の歌
♪ツェムリンスキー:6つの歌 op.13
♪細川俊夫作曲:2つの子守歌(日本民謡集より)
♪モーツァルト:すみれ、夕べの想い 他

びわ湖ホール オペラへの招待 モーツァルト《フィガロの結婚》(イタリア語上演、日本語字幕付)
2023.10/7(土)〜10/9(月・祝)、10/14(土)〜10/16(月) びわ湖ホール 中ホール

阪哲朗(指揮)
松本重孝(演出)
びわ湖ホール声楽アンサンブル
日本センチュリー交響楽団

大西宇宙 バリトン・リサイタル
2023.10/22(日) びわ湖ホール 小ホール

大西宇宙(バリトン)
ブライアン・ジーガー(ピアノ)

アンサンブルの楽しみ 〜演奏家のつどい〜 vol.15
2023.11/4(土) びわ湖ホール 小ホール


カザルス弦楽四重奏団
2023.11/5(日) びわ湖ホール 小ホール

♪J.S.バッハ:フーガの技法 ニ短調 BWV1080(全曲)

ボローニャ歌劇場 ベッリーニ作曲 歌劇『ノルマ』
2023.11/11(土) びわ湖ホール 大ホール


共同制作オペラ J.シュトラウスII 《こうもり》(ドイツ語上演、日本語・英語字幕付)
2023.11/19(日) びわ湖ホール 大ホール

阪哲朗(指揮)
野村萬斎(演出)
福井敬、森谷真理(山形公演:田崎尚美)、山下浩司、藤木大地、与儀巧、大西宇宙(山形公演:青山貴)、幸田浩子、晴雅彦、桂米團治 他
日本センチュリー交響楽団

東京芸術劇場公演:11/25(土)
やまぎん県民ホール公演:12/17(日)

気軽にクラシック 森季子(メゾソプラノ)
2023.11/25(土) びわ湖ホール 小ホール


石田組(弦楽アンサンブル)
2023.11/26(日) びわ湖ホール 大ホール


〈びわ湖の午後63〉 池田香織 メゾソプラノ・リサイタル
2023.12/2(土) びわ湖ホール 小ホール

池田香織(メゾソプラノ)
石野真穂(ピアノ)

KEIBUN第九 2023 演奏会
2023.12/9(土) びわ湖ホール 大ホール

指揮:未定
大阪フィルハーモニー交響楽団
KEIBUN第九合唱団
♪ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125「合唱付き」

びわ湖ホール オペラへの招待 オッフェンバック作曲 オペレッタ『天国と地獄』 (日本語上演、日本語字幕付)
2023.12/21(木)〜12/24(日)
びわ湖ホール 中ホール
大川修司(指揮)
岩田達宗(演出)
宮本益光(訳詞)
びわ湖ホール声楽アンサンブル
大阪交響楽団

びわ湖ホール ジルヴェスター・コンサート2023
2023.12/31(日) びわ湖ホール 大ホール

キンボー・イシイ(指揮)
大阪交響楽団
ソリスト:未定
桂米團治(司会)
びわ湖ホール声楽アンサンブル
ジルヴェスター合唱団(一般参加)
ジルヴェスター・ファンファーレ隊(一般参加)

ピアノ・ストーリー クララ・シューマンとヨハネス・ブラームス 「音符に愛を閉じ込めて」
2024.1/14(日) びわ湖ホール 中ホール

伊藤恵、阪田知樹(以上ピアノ)
金月真美、宮坂俊蔵、谷昌樹(以上声の出演)
安江正也(構成・台本)
♪ブラームス:ワルツ イ長調 op.39-15
♪ブラームス:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ヘ短調 op.2 第1楽章
♪モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調より 他

〈大人の楽しみ方35〉 ハーモニカ・カルテット スヴェング
2024.1/24(水) びわ湖ホール 小ホール


日本センチュリー交響楽団 びわ湖定期公演vol.16
2024.1/28(日) びわ湖ホール 大ホール

秋山和慶(指揮)
久末航(ピアノ)
ウェーバー:「オベロン」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15
メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 op.56「スコットランド」

びわ湖ホール プロデュースオペラ R.シュトラウス作曲《ばらの騎士》(ドイツ語上演・日本語字幕付)
2024.3/2(土)、3/3(日) びわ湖ホール 大ホール

阪哲朗(指揮)
中村敬一(演出)
森谷真理/田崎尚美、妻屋秀和/斉木健詞、八木寿子/山際きみ佳、青山貴/池内響、石橋栄実/吉川日奈子、
船越亜弥、高橋淳、益田早織、松森治、島影聖人、古屋彰久、晴雅彦、山本康寛、清水徹太郎 他
びわ湖ホール声楽アンサンブル(合唱)
京都市交響楽団

〈びわ湖の午後64〉アンヌ・ケフェレック ピアノ・リサイタル
2024.3/10(日) びわ湖ホール 小ホール


びわ湖ホール声楽アンサンブル 第78回定期公演
2024.3/23(土) びわ湖ホール 小ホール


びわ湖ホール声楽アンサンブル 東京公演vol.14
2024.3/24(日) 東京文化会館(小)

河原忠之(指揮・ピアノ)

※そのほか、オペラ講座、鑑賞教室、バレエ公演、邦楽公演等を予定。

びわ湖ホール
https://www.biwako-hall.or.jp