第26回 京都の秋 音楽祭

2ヵ月にわたり古都を彩る華やかなプログラム

 26回目となる「京都の秋 音楽祭」がいよいよ開幕する。9月17日の開会記念コンサートは、フレッシュな顔合わせで、京都市交響楽団とともにロシア音楽の傑作を取り上げる。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番に挑むのは、グリーグ国際ピアノコンクールなど8つのコンクールで優勝した注目の髙木竜馬。京響を指揮するのは、近年活躍著しい原田慶太楼。若き俊英二人の火花の散るような丁々発止は、開幕に相応しいものとなるだろう。メインのチャイコフスキー交響曲第4番も期待できる。

 9月30日は、ロンドン交響楽団(LSO)が登場する。サイモン・ラトルは16年間べルリン・フィルの首席指揮者・芸術監督を務めた後、この名門で音楽監督を務めているが、退任を控え、これがLSOとの最後の日本ツアーとなる。前半のフランスものではドビュッシーの劇音楽「リア王」よりが珍しいが、メインのブルックナー交響曲第7番が注目である。今回ラトルはコールス版を使うと言い、「私たちは“正しい7番”を演奏できると思う」と述べている。第2楽章のクライマックスの楽器法など、ラトルの考える“正しい7番”がどういうものか、実演で確かめたい。

 10月22日は、今年生誕200年を迎えたセザール・フランクの室内楽。フランクは大器晩成の作曲家で、傑作のほとんどが晩年の約10年の間に生み出されている。その時期の代表作、ヴァイオリン・ソナタやピアノ五重奏曲を併せて味わえるのが嬉しい。世界的名匠エリック・ル・サージュと新進気鋭の弓新ら若手との共演も楽しみだ。

 11月3日、巨匠ミシェル・ブヴァールのオルガン・コンサートもフランクに焦点をあてる。プログラムはその傑作を中心に、彼に影響を与えた作曲家から20世紀のメシアンまで。フランクと同じくパリ国立高等音楽院で教鞭をとったフランス・オルガン界を代表する達人の芸を楽しみたい。

 11月6日、パスカル・ロフェ&京響公演は、生誕150年のセルゲイ・ディアギレフが見出した作曲家がテーマ。ディアギレフは優れた芸術家を発掘する最高の目利きであり、20世紀初めのパリで一世を風靡した。今回取り上げる「火の鳥」はストラヴィンスキーとの三部作の最初の曲であった。プロコフィエフの作品からは、代表作のひとつ、ピアノ協奏曲第3番を。名手アレクセイ・ヴォロディンが、ロシアン・ピアニズムの粋を聴かせてくれるだろう。リムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」では、石田泰尚によるヴァイオリン・ソロも楽しみだ。

 11月23日、音楽祭のトリを務めるのは、イリーナ・メジューエワ。ラフマニノフがニューヨークで弾いていたスタインウェイが京都にやってくる。ラフマニノフがアンコールで必ず弾いた、前奏曲嬰ハ短調を含む「幻想小曲集」で始まるプログラムは、メトネル、スクリャービンを挟んで、大作ピアノ・ソナタ第2番で締めくくられる。

 このほか、ネルソンスとボストン交響楽団、神尾真由子、アクセルロッドと京響のマーラー「復活」など聴き逃せない演目が目白押しである。「京都の秋 音楽祭」への期待はますます高まる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年9月号より)

2022.9/17(土)〜11/23(水・祝) 京都コンサートホール
問:京都コンサートホール075-711-3231
https://www.kyotoconcerthall.org
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。