謙゠デイヴィッド・マズア(指揮) 東京文化会館チェンバーオーケストラ

マズア家ゆかりのメンデルスゾーンをメインに

 東京文化会館が主催する東京音楽コンクールは、優れた奏者を輩出してまもなく20年。初期の入賞者たちはいまや音楽界の第一線を担っている。そうしたメンバーを中心に、うでっこきを揃えたのが「東京文化会館チェンバーオーケストラ」だ。今年も、第4回の入賞者で現在、東京フィルのコンマスを務める依田真宣をトップに、精鋭31名が集う。ソリストとして実績を積んでいる奏者や在京オケの首席クラスも多数参画しており、これで小ホールの公演というのだから、大迫力で贅沢なものとなろう。

 指揮に謙゠デイヴィッド・マズアを迎えているのも今回の見どころだ。謙゠デイヴィッドは大指揮者クルト・マズアを父、日本人ソプラノ歌手を母に持つサラブレッド。ゲヴァントハウス管からニューヨーク・フィルへという父のキャリアに伴って、少年時代までをライプツィヒで過ごしアメリカで学んだ国際派だ。現在はアメリカのオーケストラにポストを持ちつつ、世界中で活躍している。若手の育成にも熱心で、今年7月にはPMFに招かれ、オープニング・コンサートでフレッシュな演奏を引き出した。

 今回はプログラミングにもこだわりが感じられる。プロコフィエフ、シベリウスに続いて、アメリカの作曲家コールリッジ゠テイラー・パーキンソンの作品が光彩を放つ。後半は生まれ故郷、ライプツィヒゆかりの作曲家メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。PMFで「宗教改革」を指揮したのに続いての選曲で、深いシンパシーを持っているのだろう。フレッシュなコンサートになりそうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年9月号より)

2022.9/3(土)18:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp