名匠が世に問う新鮮なブルックナー体験
コロナ禍以来、ごくわずかな例外を除いて来日オーケストラの公演が途絶えてしまっていたが、7月、ついにドイツからケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団が来日する。1827年に設立され、ブラームスやマーラーの作品も初演したという歴史あるオーケストラだ。現在は毎シーズン約50回の公演を開きつつ、ケルン歌劇場のオーケストラとしても活動している。指揮を務めるのは、現在のカペルマイスターでありケルン市音楽総監督のフランソワ゠グザヴィエ・ロト。ロトといえばピリオド楽器のオーケストラ、レ・シエクルの創設者として名高いが、モダン・オーケストラとも活発な活動をくりひろげており、2015/16シーズンよりケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団を率いている。レコーディング活動にも積極的で、同コンビによるブルックナーの交響曲全集シリーズがスタートしている。
7月3日、東京オペラシティ コンサートホールで開かれる公演でロトが用意したのは、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番(ピアノは河村尚子)とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」(1874年第1稿)。なんといっても目をひくのは「ロマンティック」が一般的な第2稿ではなく、1874年の第1稿で演奏される点だろう。両者ははっきりと異なる音楽だ。同じ主題を用いながらも、その展開は大きく違う。第3楽章スケルツォに至ってはまったく別の音楽だ。まるで音楽のパラレルワールドを旅するような新鮮さを味わえるはず。また、モーツァルトでの河村尚子との共演もどんな化学反応が起きるのか楽しみ。この夏、最大級の話題を呼ぶ公演になるのでは。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年6月号より)
2022.7/3(日)15:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp
他公演
2022.7/4(月) サントリーホール(ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212)
7/5(火) 赤穂市文化会館 赤穂化成 ハーモニーホール(0791-43-5111)