In memoriam 野島 稔

Minoru Nojima 1945-2022

 国際的なピアニストで東京音楽大学学長の野島稔氏が、5月9日死去した。享年76歳。
 神奈川県横須賀市生まれ。幼少より井口愛子氏に師事。桐朋学園高校3年の1963年、第32回日本音楽コンクール第1位受賞。66年ソビエト文化省の招きでモスクワ音楽院に留学し、レフ・オボーリンに師事した。69年には第3回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで第2位に入賞。翌年カーネギー・ホールでデビューして以来、世界各国でリサイタルを開催し、国内外の主要オーケストラと共演を重ねてきた。

 教育者としても、仙台国際音楽コンクールをはじめ、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール、エリザベート王妃国際コンクールなど多数のコンクールで審査員を務め、後進の育成でも多大な功績をのこした。
 2006年には、横須賀芸術劇場において自らが審査委員長を務める「野島 稔・よこすかピアノコンクール」を創設。ピアニストの登竜門として隔年で開催されている。2020年、第8回目のコンクールは新型コロナウイルス感染症拡大の影響により中止を余儀なくされたが、今年4年ぶりに行われることが決定しており、開催を目前にしての訃報となった。今回のコンクールは、梅津時比古審査委員を審査委長代行として、予定通り開催されることが発表されている(開催期間:5/16〜5/22)。

第7回 野島 稔・よこすかピアノコンクールの入賞者、審査委員

2022年「第9回 野島 稔・よこすかピアノコンクール」に際し、ぶらあぼ5月号に寄せられたメッセージを紹介する。

野島 稔(審査委員長)メッセージ

 前回のコンクールは2020年5月に予定していたのですが、91名の応募があったもののまだ新型コロナウイルス感染症がどのようなものであるのか、未知なことも多く、残念ながら中止することとなりました。

 コロナ禍では、これまでと同じような対面レッスンができず、メリットやデメリットは色々ですが、録音やリモートでの学びなど、工夫していろいろな努力をされてきたことと思います。ただ、その成果を多くの人に聴いてもらう場がなかなか持てなかったことは大変なご苦労だったと思います。コロナ禍は続いていますが、若いみなさんは、新たな環境や方法にも柔軟に適応し、ご自分なりの挑戦を続けているのではないでしょうか。

 このコンクールでは、出場者の方が、これから長く音楽とともに歩んでいくにあたり、今、じっくりと取り組むべき課題を設定しています。コンクール創設以来、それは、ほぼ変わっておりません。今回4年ぶりの開催を迎えますが、このコンクールを受けるにあたり、自分自身や楽曲とよく向き合い、自分の音楽を掘り下げることを大切にしていただきたいと思います。そして自分の中から湧き出る音楽を表現してほしいです。私も審査を忘れるような演奏に出会えることを楽しみにしています。

 また、聴衆の方には、彼らが、長くたゆまぬ努力を続け、コンクールという場で真摯に演奏する姿をぜひご覧いただきたいと思います。全身全霊を傾けた演奏は感動的ですらあり、みなさんの心に届く演奏もきっとあると思います。みなさんの応援を形にできる「聴衆賞」もありますので、ぜひ、心に響いた演奏に投票をしてください。

横須賀芸術文化財団 
https://www.yokosuka-arts.or.jp