音楽の街、調布でお待ちしています!
取材・文&構成: 伊熊よし子
写真:野口博
初夏の季節、緑豊かでのびやかな空気を纏う調布市で開催される調布国際音楽祭が、2022年で10回目というメモリアル・イヤーを迎える。今年は「“BACH” TO THE FUTURE 未来をつなぐ音楽祭」をテーマに、バッハを核としたさまざまな興味深いプログラムが組まれ、個性あふれる実力派アーティストが一堂に会する。
そこで調布国際音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーを務める鈴木優人と、昨年初めて同音楽祭に参加したギタリストの村治佳織が、音楽祭に関して対談を行った。ふたりの話は出会いから共演に関して、作品について、共演者やクラシック音楽界の未来を展望することまで、多種多様な話題が飛び出し、尽きることがなかった。その内容を凝縮してお伝えしたいと思う。
撮影時のみマスクを外しています
鈴木 私が佳織さんの音楽に初めてじっくりと触れたのは、空の上なんです。国際線の飛行機に乗ると、CDセレクションというチャンネルがあるでしょう。そのなかに村治佳織『シネマ』というCDがあり、心が震えたんです(笑)。特に好きなのが「人生のメリーゴーランド(映画『ハウルの動く城』)」の演奏で、昨年はこれをぜひ演奏してほしいとお願いしました。
村治 私は以前にもこの音楽祭に参加するチャンスがあったのですが、そのときは出演できず、ずっと参加したいなぁと思っていました。昨年初めて参加しましたが、ものすごく楽しかったです! このときは共演者がいるアンサンブルのステージではなく、ひとりで演奏するリサイタル・プログラムをオファーされましたので、とても光栄に思い、うれしかったですね。ですから、映画音楽やギターの魅力を伝えることができる作品を選んで選曲しました。優人さんとはこれまで何度か共演させていただき、テレビ番組などでもご一緒していますので、気心は知れている感じです。私よりも年下なのに、風格があるというか、安心感を持たせてくれるマエストロというか…。
鈴木 いやぁ、佳織さんの方こそ、長年のキャリアがあるスターですからね、みなさんが楽しみにしてくれるコンサートになると思います。今年はまた違ったプログラムが聴けるんですよね。
村治 ええ、今年はヴァイオリンの廣津留すみれさん、サックスの上野耕平さん、ホルンの福川伸陽さん、ピアノの森下唯さん、そして鈴木優人さんがピアノと司会をされるという豪華メンバーのコンサートです。今回は各々のソロあり、アンサンブルありという多彩な曲目が組まれています。
鈴木 名曲を名手たちでじっくり聴くことができるというわけですね。
♪鈴木優人さん&村治佳織さん 出演公演♪
◎お昼のクラシック〜ツィゴイネルワイゼンからボヘミアン・ラプソディまで〜
2022.6/24(金)13:00 調布市グリーンホール
エルガー:愛のあいさつ
タレガ:アルハンブラの思い出
ピアソラ:アヴェ・マリア
リムスキー゠コルサコフ:熊蜂の飛行
イエペス:禁じられた遊び
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
ピアソラ:「タンゴの歴史」より“Bordel 1900” “Cafe 1930”
マーキュリー:ボヘミアン・ラプソディ
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー 短縮版 ほか
ギター:村治佳織
ヴァイオリン:廣津留すみれ
サックス:上野耕平
ホルン:福川伸陽
ピアノ:森下唯
ピアノ&司会:鈴木優人「まさト~ク付き」
村治 楽器も演奏者の年代もさまざまで、個性あふれるメンバーがそろっています。エルガーの「愛のあいさつ」、リムスキー゠コルサコフの「熊蜂の飛行」など有名な作品が次々に登場し、私はタレガの「アルハンブラの思い出」とイエペスの「禁じられた遊び」も演奏しようと思っています。
鈴木 それは楽しみだなぁ。ぜひ、またアンコールに「人生のメリーゴーランド」を(笑)。佳織さんは、音楽も実に視野が広くフラットな感覚をお持ちですが、それが私とも合う部分で、音楽に限界を作らず、いろんなことにチャレンジしています。おつきあいしている人たちも、音楽界以外の分野の人も多いんでしょう?
村治 ええ、そうですね。さまざまなお仕事をしている方たちと一緒に話したり、お食事したりするのが好きですね。
鈴木 実は、音楽の企画はデスクに座ってミーティングしていても、いいアイデアは湧いてこないものなんですよ。みんなでおいしい物を食べたり、ワイワイ話したりしているときに、ふと良い企画が生まれる。現代ならではのITなども最大限利用して、いまだからこそできる企画というものを積極的に取り入れていきたいと考えています。
村治 優人さんは、コロナ禍にあって、前回の動画配信などもご自身で作成されたと聞きましたが…。
鈴木 そうなんです。もちろん専門家に託す面もありましたが、基本的なところはすべて自分で行いました。「第九」の合奏動画は、世界中から送っていただいた演奏を、制作チームみんな夜中までパソコンに向かって何時間も制作し、少しの音のズレや弓のズレなども気になるものですから、それらを調整して仕上げました。これは現在も見られますから、ぜひ検索してみてください。
村治 そのエネルギーと忍耐力、情熱、チャレンジ精神はすごいですよね。
鈴木 常に新たなことに挑戦し、調布に音楽を聴きにきてほしいという一心で行っていることです。以前、おもしろいことがあったんです。銀座のバーの知り合いのバーテンダーさんが「鈴木さん、これ知っていますか?」とオスカー・ピーターソン(ジャズ・ピアニスト)とジョー・パス(ジャズ・ギタリスト)の演奏する「サマータイム」の録音を聴かせてくれたんです。なんとそれがギターとクラヴィコードのデュオなんですよ。すばらしく心に響く演奏でね、ぜひ私もクラヴィコードで佳織さんと共演したいなとお願いして、「題名のない音楽会」で実現しました。
村治 ええ、最高でしたね! ギターはいつも音量がないことで悩んでいますが、優人さんのクラヴィコードとの共演のときに、「ああ、ギターより音が小さいんだ」って、うれしくなっちゃって(笑)。ぜひ、調布国際音楽祭でも実現したいですね。深大寺のコンサートだったら、可能じゃないかしら。第11回目にやってみましょうか。
鈴木 もう、来年の話が出てきちゃったなぁ。まずは、今年を成功させないとね。今年はピアニストもすばらしいメンバーが参加してくれますし、充実した内容になると思います。ぜひ、初夏の調布にいらしてください。音楽の街、調布でお待ちしています!!
調布国際音楽祭 2022
2022.6/18(土)~6/26(日)
♪ワークショップ「新しい音楽をつくる」
6/18(土)14:00 せんがわ劇場
♪音楽祭第10回記念 オープニングコンサート
かてぃん plays ラプソディー・イン・ブルー 完売
6/19(日)14:00 グリーンホール 大ホール
♪小林愛実ピアノ・リサイタル 完売
6/21(火)14:00 グリーンホール 大ホール
♪鈴木雅明 × 岡本誠司 ~深大寺本堂に響くバッハ~ 完売
6/22(水)15:30 深大寺本堂
♪フェスティバル・ガラ「名手たちの室内楽」
~ブラームス:ホルン・トリオと管楽器のための名曲たち~
6/23(木)14:00 グリーンホール 大ホール
♪お昼のクラシック
~ツィゴイネルワイゼンからボヘミアン・ラプソディまで~
6/24(金)13:00 グリーンホール 大ホール
♪調布国際音楽祭 こどもスペシャル!
6/25(土)13:00 グリーンホール 大ホール
♪フェスティバル・オーケストラ
〜ドイツ・ロマン派の輝き〜 河村尚子を迎えて
6/25(土)18:30 グリーンホール 大ホール
♪たたいてあそぼう 第10回スペシャル
6/26(日)11:00 グリーンホール 小ホール
♪N響 × 鈴木優人
6/26(日)14:00 グリーンホール 大ホール
♪バッハ・コレギウム・ジャパン バッハ超名曲選!
6/26(日)18:30 グリーンホール 大ホール
問 チケット CHOFU 042-481-7222
チケットぴあ 0570-02-0999
イープラス https://eplus.jp