【CD】VIOLINable ディスカバリー vol.7/西本幸弘

 西本幸弘のシリーズ第7弾は「開放」がテーマ。圧倒的なのはベートーヴェンのソナタ第7番。冒頭からハ短調の楽想の緊迫感が尋常でない。渦巻動機や音階上行がそれに拍車をかける。緩徐楽章の優しい表情は息抜きとなる。コーダの突然の音階上昇の嵐はちょっとした驚き。スケルツォは楽しげであるが、sfの強打の対比が生きる。終楽章はイライラした主題から緊張の世界となり、最後まで一気に駆け抜ける。見事だ。ドヴォルザークのソナチネは、のびやかな歌が美しく、溌溂としたリズムも弾む。そこには屈折した心や静謐な祈りもある。アラール《椿姫》幻想曲はオペラの場面を思い出させて秀逸。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年3月号より)

【information】
CD『VIOLINable ディスカバリー vol.7/西本幸弘』

アラール:歌劇《椿姫》幻想曲/クライスラー:プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ/ドヴォルザーク:ソナチネ ト長調/ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第7番 他

西本幸弘(ヴァイオリン)
大伏啓太 北端祥人(以上ピアノ)

収録:2020年12月、仙台市宮城野区文化センターPaToNaホール(ライブ) 他
フォンテック
FOCD9862 ¥2970(税込)