古くて新しい世界を探るコンサート・シリーズが始動
チェンバロやオルガンなど歴史的鍵盤楽器の名手で、バロック音楽の啓蒙にも力を注ぐ、大塚直哉。公演ごとに異なるテーマを設け、大塚とゲストアーティストの共演をじっくりと楽しむ神奈川県民ホールの新シリーズ「大塚直哉が誘うバロックの世界」(全5回)が、3月にスタートする。初回のテーマは「バロックの生まれた時〜オペラの誕生」。鈴木美登里と中山美紀、2人のソプラノを迎えて、17世紀イタリアを中心とした佳品を聴かせる。
同ホールでは、2013年からシリーズ「チェンバロの魅力」で講師を務め、演奏とトークを通じ、古楽の魅力を伝えてきた大塚。これを発展させた新シリーズでは、「ゆがんだ真珠を意味すると言われる『バロック』という言葉が、今も我々を揺さぶり、惹きつける力を持つのは、なぜなのか。ダイナミックな対比に生命力を感じ、大胆な空間意識の中に、宇宙や自然、人間の真理を追究した芸術。感情を揺さぶる力を持つチェンバロをナビゲーターに、その“古くて新しい”世界を俯瞰したい」と言う。
第1回は、オペラの萌芽が生まれた17世紀初頭に活躍したカッチーニの〈麗しのアマリリ〉で幕開け。最古級の作品の一つのモンテヴェルディ《オルフェオ》から、盛期バロックのヘンデルまで、主にオペラの発達史を通し、バロックの豊穣な世界を探訪する。さらに、笙の宮田まゆみも特別出演し、一柳慧「笙とハープシコードのための『ミラージュ』」(1998)を披露。新旧の作品から、バロックに特有のコントラストの妙を浮き彫りにする。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2022年2月号より)
2022.3/26(土)15:00 神奈川県民ホール(小)
問:チケットかながわ0570-015-415
https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/