藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

記念年を彩る英国の傑作と吉松作品を並べての意欲的選曲

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の首席客演指揮者である藤岡幸夫はイギリスの王立ノーザン音楽大学指揮科で学び、由緒ある「サー・チャールズ・グローヴス記念奨学賞」を受賞した。イギリスのシャンドス・レコードと契約しCDをリリースするなど、彼にとってイギリスは第2の故郷であり、同国の作曲家への思い入れは人一倍強い。実は2020年に予定されていたのが、イギリス+吉松隆プログラムだった。それがようやく実現する。

 ディーリアス(フェンビー編)の「2つの水彩画」に始まり、吉松のチェロ協奏曲「ケンタウルス・ユニット」(チェロ:宮田大)、そして生誕150年のヴォーン・ウィリアムズの交響曲第3番「田園交響曲」という魅力的なラインナップだ。「ケンタウルス・ユニット」は神話の動物をモティーフにした協奏曲3部作のひとつで、上半身は弓をつがえる人間、下半身は褐色の胴体を持つ半人半馬のケンタウルスをチェリストに見立てた、吉松らしい躍動感のある3楽章の作品。2003年の初演だが、それを名手・宮田のチェロで聴けるのが楽しみ。

 ヴォーン・ウィリアムズの交響曲は名作が多いのに、日本では取り上げられることが極めて少ない。なかでも「田園交響曲」(1922年初演)はソプラノ(半田美和子)のヴォカリーズが入る珍しい編成だが、第一次世界大戦従軍中に作曲家が耳にした音楽を元に構想された。イギリスを愛する指揮者によって奏でられる3つの作品は新鮮な感動を呼び起こすだろう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年2月号より)

第349回 定期演奏会 
2022.2/19 (土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
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