ブルース・リウ INTERVIEW in TOKYO

いつも同じ演奏をするのではなく、即興性やそのときに感じたものを率直に表現したい

 2021年10月の第18回ショパン国際ピアノコンクールで見事優勝した、カナダ出身のブルース・リウが、コンクール終了後わずか2週間あまりで来日。東京で協奏曲とリサイタルの2公演(11/8, 11/11)に出演。満員の聴衆から熱狂的に迎えられた。その合間の11月10日に都内ホテルで取材に応じ、一気に世界の注目を集める存在となった現在の心境を語ってくれた。

Bruce Liu ©︎W. Grzędziński / The Fryderyk Chopin Institute

取材・文:伊熊よし子

 2021年10月にショパンの故郷ワルシャワで開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールは、他の国際コンクールの優勝者や上位入賞者が名を連ねる非常にレベルの高いコンクールとなった。そのなかで、第1次予選から本選にいたるまで、常に聴き手の心に深く浸透する、上質で表現力に富む演奏を展開し、耳の肥えた審査員と聴衆を魅了し続けたブルース・リウが優勝の栄冠に輝いた。そんな彼がポーランドにおける演奏会の直後に日本を演奏地に選び、来日を果たした。

「今回のショパン・コンクールはコロナ禍で1年延期され、準備期間が余分に取れたため、僕にとってはプラスとなりました。というのは、ショパン・コンクールを受けようと思ったのはごく最近のことで、本当の準備期間は約1年間だったからです。それまではダン・タイ・ソン先生のもとでショパン以外の作品ばかり弾いていました。ショパンはまったく見てもらわなかったのです。もちろん、ショパン・コンクールに参加すると決めてからは見ていただきましたが、ショパンばかり弾いていると作品に対するみずみずしい感覚が薄れてしまうため、ショパン以外の作品を弾くなどして、精神面のバランスを図るようにしました」

 ショパン・コンクールに参加する多くのピアニストは、子どものころからショパンを愛奏し、このコンクールに参加することを夢見る人が多い。しかし、ブルース・リウは、多分に異なるタイプのピアニストだ。

「僕のモットーは、常に新しいアイディアを演奏に盛り込み、先ほどの繰り返しですが、新鮮さを備えたみずみずしい演奏をすることです。楽譜と対峙する際には常にインスピレーションを大切に、クリエイティブな演奏を心がけたい。いつも同じ演奏をするのではなく、即興性やそのときに感じたものを率直に表現したいのです。
 ショパン・コンクールは、もちろん歴史と伝統のある偉大なコンクールですから緊張しましたし、第1次予選は大変でした。でも、徐々に慣れてきて、自分の個性を出せるようになってきたのです。第3次予選が自分としてはもっとも納得のいく演奏ができたと思います。モーツァルトの「《ドン・ジョヴァンニ》の〈お手をどうぞ〉による変奏曲」は、かろやかな雲に乗ったような気持ちを抱くことができました。ファツィオリのピアノを選んだのは、ノーブルでアクションのコントロールがうまくいく感じがしたからです」

 このことば通り、《ドン・ジョヴァンニ》の変奏曲は11月11日の来日公演のラストを飾る曲目だったが、気負わず気取らず自然体の演奏ながら、圧巻の表現力で聴衆を魅了した。12月1日にリリースされるコンクール・ライヴCDも、この曲がフィナーレを彩る。

「幼いころ趣味で電子ピアノを弾いていました。やがて父親が探してくれた先生のもとでピアノを始め、楽器もピアノに移りました。好きな作品は多岐にわたり、今後はラヴェルやラモーなどのフランス作品も視野に入れています。ピリオド楽器にも興味がありますが、チェンバロを演奏する場合は中途半端な演奏ではなく、本格的にしっかり勉強したい。バロック音楽にも興味があり、ハイドンやモーツァルトまでいろんな作品を弾いていきたいですね」

 往年の巨匠の演奏に魅了されているブルース・リウ。アルフレッド・コルトー、サンソン・フランソワ、そしてアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリに憧れている。ところで、ブルースという名前に関しては…。
「昔からブルース・リーに似ていると言われていたので、2、3年前に自分で付けました。でも、僕の方がハンサムでしょ(笑)」
 明朗で率直で、ナイスガイのブルース・リウ。もう2年先までスケジュールが満杯だそうだ。2022年1〜2月のガラ・コンサートが待ち遠しい。

ブルース・リウ Bruce Liu
1997年5月8日パリ生まれ。モントリオール・コンセルヴァトワールでリチャード・レイモンドに師事し卒業、現在はダン・タイ・ソンに師事している。クリーヴランド管弦楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、モントリオール交響楽団、オーケストラ・オブ・ジ・アメリカズなどの主要オーケストラと共演しており、中国国家大劇院管弦楽団とは北米ツアーを行った。最近のシーズンには、ウクライナ国立交響楽団、リヴィウ・フィルハーモニー管弦楽団と連続する二度の中国ツアー(中国国家大劇院、北京音楽庁、上海東方芸術センターなどへの出演を含む)を行ったほか、サル・ガヴォーでラムルー管弦楽団とも共演。仙台、モントリオール、テル・アヴィヴ、ヴィセウの国際コンクールで入賞している。

第18回 ショパン国際ピアノ・コンクール 2021 入賞者ガラ・コンサート

2022.2/1(火)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール
出演:ブルース・リウ、アレクサンダー・ガジェヴ、マルティン・ガルシア・ガルシア、小林愛実、ヤクブ・クシリック、レオノーラ・アルメリーニ
アンドレイ・ボレイコ(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
2022.2/2(水)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール
出演:ブルース・リウ、アレクサンダー・ガジェヴ、マルティン・ガルシア・ガルシア、小林愛実、J J ジュン・リ・ブイ
アンドレイ・ボレイコ(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp/concert/p932/

他公演
2022.1/23(日)14:00 大阪/ザ・シンフォニーホール ☆
問 ABCチケットインフォメーション06-6453-600
2022.1/28(金)19:00 富山/オーバード・ホール ★
問 富山市民文化事業団076-445-561
2022.1/29(土)15:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール ☆
問 中京テレビ事業052-588-447
2022.1/30(日)15:00 栃木県総合文化センター ☆
問 栃木県総合文化センタープレイガイド028-643-1013
☆リサイタル公演
★オーケストラ公演

【CD Information】
ブルース・リウ 第18回ショパン・コンクール優勝者ライヴ/ブルース・リウ(ピアノ)

ユニバーサル ミュージック UCCG-1890 ¥3080(税込) 12/1(水)発売

ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ op.22
ショパン:マズルカ 嬰ト短調 op.33-1(第22番)
ショパン:マズルカ ニ長調 op.33-2(第23番)
ショパン:マズルカ ハ長調 op.33-3(第24番)
ショパン:マズルカ ロ短調 op.33-4(第25番)
ショパン:エチュード 嬰ハ短調 op.10-4(第4番)
ショパン:エチュード イ短調 op.25-4(第16番)
ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 op.27-1(第7番)
ショパン:ワルツ 変イ長調 op.42(第5番)
ショパン:スケルツォ 第4番 ホ長調 op.54
ショパン:モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》の〈お手をどうぞ〉による変奏曲 op.2
収録:2021年10月、ワルシャワ(ライブ)
https://www.universal-music.co.jp/p/uccg-1890/