アニヴァーサリーはソロとコンチェルトで華やかに!
デビュー30周年を迎えた熊本マリが、秋に二つの重要なコンサートを控えている。一つは、今年1月にオープンしたばかりのロームシアター京都での『ROHM CLASSIC SPECIAL 熊本マリ ピアノコンチェルト』。ローム株式会社が主催する同シアターでの公演第1弾に、指揮の広上淳一、京都市交響楽団と「華麗に、ダイナミックに (チラシより)」登場する。
熊本自身が選んだ演目はガーシュウィンとアルベニス。幕開けに選んだガーシュウィンの管弦楽曲「キューバ序曲」は「勢いのあるラテンの雰囲気がとても好き」と語る。続くアルベニスのピアノと管弦楽のための「スペイン狂詩曲」は、あまり演奏されることのない珍しい作品だが、「とにかく華やかで、踊り狂いたくなる曲です。もっと世に知られるべきですね」と熱を込めた。「私の中では、宗教的な幻想が教会の中からわき起こり、善と悪との闘いが繰り広げられ、最後は享楽的に爆発していく…そんなイメージです」。10代をスペインで過ごした熊本にとって、この作品に現れるスペインの圧倒的なリズムは、身体の中から湧き起こるものだという。
後半はガーシュウィンの「へ調のピアノ協奏曲」。「ラプソディ・イン・ブルー」に比べると知名度の下がる作品だが、「より完成度が高く、ピアノとオーケストラとの掛け合いがもっと面白い。部分的にはロシア的なハーモニーも聞こえてきます。第3楽章はラフマニノフの協奏曲と感覚的に似ているところもありますね」。ガーシュウィンとアルベニスは、「どちらもリズムに特徴があり、終盤はピアノと打楽器で盛大に盛り上がります。私自身が弾いていてもっとも楽しい曲を選んでいますので、この楽しさはお客様にもそのままお伝えできると思っています」
東京では30周年記念ソロリサイタルを開く。こちらは没後100年を迎えたグラナドスを中心として、同時代を生きたドビュッシー、プッチーニ、マスカーニ、ナザレらの作品を揃えた。「グラナドスはシューマンの影響を感じさせるロマンティックで抒情的な作曲家。同時代人の作品と並べることで、作曲家像を浮き彫りにしたいと思います」。
舞台衣装は、「コンサートのコンセプトを伝える大切な要素」と熊本は考えている。敬愛するコシノヒロコがデザインするドレスにも注目したい。京都公演は「強烈な赤」をイメージしたものになるという。
絶えざる探究心、そして発見の感動を原動力にしているという熊本。間もなく新しいエッセイ集『朝から晩までピアニスト−元気 奏でる小さな手』(ハンナ社)も刊行される。ますます精力的な活動に目が離せない。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
ROHM CLASSIC SPECIAL
ロームシアター京都 オープニング記念事業
熊本マリ ピアノコンチェルト 〜華麗に、ダイナミックに〜
11/2(水)19:00
ロームシアター京都 メインホール
問:エラート音楽事務所075-751-0617
熊本マリ デビュー30周年記念
ピアノリサイタル
10/11(火)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
http://www.marikumamoto.com