総監督の遺志を引き継いで 〜2024セイジ・オザワ 松本フェスティバルの概要発表

サイトウ・キネン・オーケストラ創設40周年

　「2024セイジ・オザワ 松本フェスティバル（OMF）」の今夏の概要が2月22日、発表された。会期は8月9日〜9月4日の約1ヵ月。2月6日の小澤征爾総監督の逝去を受けて、開催の行方が注目されていたが、サイトウ・キネン・オーケストラ（SKO）創設40周年の節目に、齋藤秀雄や小澤の薫陶を受けた音楽家たちが再び松本に集うことになる。

　メインとなるオーケストラコンサートで指揮台に上がるのは、2022年に《フィガロの結婚》でOMFデビューを飾った沖澤のどかと、同年にOMF30周年記念特別公演でタクトをとったアンドリス・ネルソンス。沖澤はオペラ公演にも登場するが、今回、生前の小澤が沖澤をOMF首席客演指揮者に指名していたことも併せて発表された。

　　公表された生前の小澤総監督によるコメントには、二人の指揮者への温かいメッセージも含まれている。

サイトウ・キネン・オーケストラの始まりから40周年だなんて、びっくりします。

2022年に沖澤さんとアンドリスと出会えたことは僕にとって、非常に幸運な、素晴らしい出来事でした。二人がSKOと創る音楽をリハーサルや本番で全身に浴びながら、僕は何度も若い時に感じていた冒険の始まりのような、胸の高鳴りを思い出しました。貨物船で欧州を目指してた頃、世界中どこから見ても夕陽はやっぱり美しいんだと気がついたこと、ラヴィニア音楽祭や、タングルウッドやボストンの日々を歩み始めた頃に感じていたあの興奮と胸の高鳴り―それらが鮮やかによみがえりました

新しい時代に向けて、大きな一歩を踏み出す今年のフェスティバルを、松本を、僕は心から楽しみにしています。

セイジ・オザワ 松本フェスティバル　総監督
小澤征爾

　オーケストラ コンサート Aプログラムは、メンデルスゾーン「夏の夜の夢」（抜粋）、R.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」「四つの最後の歌」と、沖澤が得意とするドイツものが組まれた。SKOとの出会いを「サイトウキネンに宿る音楽の息吹を全身に受けて、身体が浮くように感じた」と語る沖澤。「四つの最後の歌」では、METやパリ・オペラ座をはじめ世界の主要歌劇場で活躍し、昨年はベルリン・フィルの《影のない女》（演奏会形式）にも出演していた、南アフリカ出身のソプラノ、エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァーの歌唱も注目される。

　一方、「このフェスティバルこそが彼（小澤）の不朽のレガシーである」と語るネルソンスが振るオーケストラ コンサート B・Cプログラムは、ブラームス交響曲全曲。SKOの40年の歴史のなかでも重要な位置を占めてきたレパートリーでもある。ボストン響（BSO）音楽監督という立場においても小澤の“後輩”にあたるネルソンスだが、ブラームスはBSOとの全曲録音も名高い。一昨年、SKOとのマーラー第9番で、名手揃いのメンバーと起伏に富んだ見事なアンサンブルで聴衆を圧倒しただけに、本2公演への期待は高い。

　OMFオペラには、SKOではなく小澤征爾音楽塾オーケストラが登場。22年の《フィガロ》で、緻密かつ大胆な指揮ぶりで大成功を収めた沖澤が、日本の若手主体のキャストとともに、プッチーニ《ジャンニ・スキッキ》でどのような指揮を見せるのか、注目を集めそうだ。演出はおなじみのデイヴィッド・ニース。

　その他、恒例の室内楽公演「ふれあいコンサート」やOMF室内楽勉強会、子どものための教育プログラムも予定されている。長年、多くの音楽ファンや地元市民に愛されてきたフェスティバルが、総監督の遺志を引き継いで、2024年夏、次世代へとバトンをつなぐ新たな一歩を刻む。

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