宮本亞門演出《フィガロの結婚》でN響が20年ぶりにオペラのピットで演奏! 〜東京二期会 2027/28シーズンラインナップ発表

 東京二期会が2027/28シーズンのラインナップを発表した。会見には、山口毅・東京二期会常務理事/事務局長のほか、NHK交響楽団芸術主幹の西川彰一、ソプラノ歌手の嘉目真木子らが登壇した。

左より:大野徹也(東京二期会常務理事)、西川彰一(NHK交響楽団芸術主幹)、
嘉目真木子(ソプラノ)、山口毅(東京二期会常務理事/事務局長)

 新シーズンのテーマは「再会と新たな出会い」。新国立劇場や全国の劇場を活用した主催公演、豪華制作陣によるワールドプレミエなど5演目が並ぶ。なかでも最大のトピックは、今年創立100年を迎えるNHK交響楽団がオーケストラピットに入ることだろう。東京二期会としては、1981年の《フィデリオ》(ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮)以来、約46年ぶりの共演となる。演目は宮本亞門演出による《フィガロの結婚》。指揮にはデンマークの巨匠ミカエル・シェーンヴァントを迎えて、2027年8月・9月にシーズンオープニングを飾る。

 N響はこれまでに、日本の演奏史において重要な公演でオペラのピットに入ってきた歴史がある。1950〜70年代のイタリア・オペラ来日公演や、1967年の大阪国際フェスティバルでピエール・ブーレーズ指揮《トリスタンとイゾルデ》など。最後にピットに入ったのは、新国立劇場で上演されたワーグナー《ジークフリート》(2003年)、《神々の黄昏》(04年)であり、そこから実に20年以上の月日が経っている。
 
 N響芸術主幹の西川彰一は、今回の共演が実現した経緯と期待を次のように語る。

西川彰一(NHK交響楽団芸術主幹)

「オペラを敬遠していたわけではなく、我々としてはいつでも演奏する気持ちがありました。来年は101年目の新たなステージに入っていきますので、ぜひにとお受けしました。
 シンフォニーとオペラは車の両輪といいますが、N響の場合はシンフォニーに特化してきたところがあります。新しい時代を迎えるにあたり、これからはオペラのピットに入る仕事も積極的に受けていくことが、オーケストラの発展にとって意義深いことだと考えています。楽員に発表した際、いつもはわりと冷静なのですが、今回は『いつやるのですか』『ぜひ出たいのですが、スケジュールはどうなっていますか』と問い合わせがありました。いま若い楽員たちも増えていますので、フレキシビリティと好奇心を持って臨んでくれるのではないかと楽しみにしています」

 山口常務理事・事務局長もN響との共演に期待を寄せる。

山口毅(東京二期会常務理事/事務局長)

「東京二期会としてはいろんなオーケストラと共演していますが、新シーズンはN響以外に、東京フィル、都響、読響に参加いただきます。総合芸術としてオペラを高めていく、という目標があり、お互いにいい意味でケミストリーを起こしながら、高みを目指していきたいと考えています。ですので、N響さんとは今後もぜひ共演を続けたいです」

 この《フィガロの結婚》には嘉目真木子が出演。本プロダクションでこれまでにスザンナ役を2度務めてきたが、今回は憧れのアルマヴィーヴァ伯爵夫人に初挑戦する。

嘉目真木子

「新シーズンのテーマが『再会と新たな出会い』と伺い、私にとって今回の《フィガロの結婚》は、若い頃から関わってきた作品との“再会”であり、そして学生時代に第九の合唱で参加させていただいた憧れのN響さんとの“新たな出会い”ともなります。前回の《フィガロの結婚》出演から11年、歌手として成長した姿をお見せしたいですし、年を重ねた今だからこそ、人間としての経験や感情の深みを伯爵夫人役に注ぎ込めると感じています。

 オペラは規模が大きければ大きいほど関わるスタッフが増えていきますが、大きな舞台に出演することは非常に責任が伴います。歌手としては、N響さんとどんな音楽が作れるか楽しみであり、素晴らしい音楽を目指し提供していくことが責務でもありますので、緊張感と責任感を持って1年間準備したいと思います。
 人間が力を出し合って創る舞台は、AIには敵わないことです。《フィガロの結婚》はいろんなキャラクターの人間がでてきて、そのどれかにきっと共感をもっていただけると思います。とくに亞門さんの演出は、人間が愛しい存在であることを感じさせてくれるプロダクションですので、若い方にもぜひ観ていただきたいです」

 会見の冒頭、海外出張中の永野毅理事長に代わり、大野徹也常務理事が代読したメッセージには「文化は継続が最も大切」とあった。東京文化会館の長期休館に伴い、従来のような大規模なワールドプレミエや海外提携公演が制約を受ける厳しさがあるなか、新たにクラウドファンディングを開始するなど財団としても模索を続けている。一方で、完売しない限り提供を続けている学生席など、オペラの未来を担う若い観客のための取り組みも継続していく。
 
 27年1月には、37年ぶりとなる海外公演(ハンブルクのエルプフィルハーモニーにてヘンツェ《午後の曳航》演奏会形式)も決定するなど、「ピンチをチャンスに変える」を合言葉に、今後も「日本のオペラシーンに明るい未来が広がっていくこと」を目指していく。

取材・文:編集部

【2027/2028シーズンラインナップ】

[8月・9月]モーツァルト《フィガロの結婚》
指揮: ミカエル・シェーンヴァント
演出: 宮本亞門
管弦楽: NHK交響楽団
日程・会場: 2027年8月 カルッツかわさき / 9月 新国立劇場 オペラパレス

宮本亞門が二期会演出デビューを飾り、2002年に初演後、幾度となく再演されているプロダクション。今回の指揮はデンマークの巨匠ミカエル・シェーンヴァント。世界の歌劇場や音楽祭で多くの実績を残す名指揮者で、今回日本で初めてオペラを指揮する。宮本からの信頼厚い嘉目真木子がアルマヴィーヴァ伯爵夫人役に初挑戦。

[10月・28年1月]ヴェルディ《仮面舞踏会》新制作
トゥールーズ・キャピトル劇場とニュルンベルク歌劇場との提携公演
指揮: イヴ・アベル
演出: ヴァンサン・ブサール
衣裳:クリスチャン・ラクロワ
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
日程・会場: 2027年10月 よこすか芸術劇場 / 2028年1月 新国立劇場 オペラパレス

よこすか芸術劇場でプレミエ。世界的デザイナー、クリスチャン・ラクロワによる衣裳、新国立劇場のレパートリー作品《椿姫》をはじめ美しい舞台に定評のあるヴァンサン・ブサールの演出と、フランスを代表する二人のアーティストを招聘。指揮はMET、ウィーン国立歌劇場などで活躍するイヴ・アベル。

[11月]モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》ワールドプレミエ
NISSAY OPERA提携
指揮: ヴィタリ・アレクセーノク
演出: ギー・ヨーステン
管弦楽: 東京都交響楽団
日程・会場: 2027年11月 日生劇場

2018年《後宮からの逃走》で好評を博したベルギーを代表するギー・ヨーステンが、ふたたび日生劇場でワールドプレミエの演出として帰ってくる。指揮はヴィタリ・アレクセーノク。現在、ライン・ドイツ・オペラの首席指揮者で、カターニアにあるマッシモ・ベッリーニ劇場で首席客演指揮者を務めている、1991年生まれのライジングスター。宮本亞門演出《蝶々夫人》を指揮してゼンパーオーパーデビューを果たしている。欧州で注目を集める若きスターの日本デビュー。管弦楽は2020年の《椿姫》以来、都響がピットに入る。

●2028年
[1月]シューマン《楽園とペリ》
指揮: キム・ウンスン
管弦楽: 読売日本交響楽団
日程・会場: 2028年1月 東京芸術劇場 コンサートホール

東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ第3弾、映像を伴うセミ・ステージ形式。今年12月に上演の《ゲーテの「ファウスト」の情景》に続き、シューマン作品を取り上げる。指揮は、サンフランシスコ歌劇場の音楽監督を務めるキム・ウンスンが日本デビュー。音楽監督就任後、サンフランシスコで宮本亞門演出の《蝶々夫人》プレミエ時に指揮。ベルリン・フィルをはじめシンフォニーとオペラで活躍する韓国人の若手指揮者。

[5月]ヘンデルによる作品(新制作)
指揮: 鈴木秀美
演出: 中村蓉
管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ
日程・会場: 2028年5月 めぐろパーシモンホール

「二期会ニューウェーブ・オペラ劇場」において、《セルセ》(2021年)、《デイダミーア》(2024年)と新たなダンス・オペラを確立した鈴木秀美&中村蓉の黄金コンビが、3度目となるヘンデル作品を新演出。演目は現在調整中。

●[2027年6月、10月]全国ツアー公演
プッチーニ《蝶々夫人》

指揮:広上淳一(札幌、山形) 森内剛(堺) 
演出:栗山昌良
管弦楽:札幌交響楽団(札幌)、大阪交響楽団(堺)、山形交響楽団(山形)
日程・会場:2027年6月 札幌教育文化会館、フェニーチェ堺
      2027年10月 やまぎん県民ホール

3つの地域でオペラの拠点を作っていこうと、無料のイベントや野外ステージなど街ぐるみの展開を行っていく。指揮には、生前、栗山昌良が高く評価していた広上淳一を起用。東京二期会には2004年1月に本プロジェクトを指揮して以来23年ぶりの登場、栗山の意思を継ぎ2公演を指揮する。大阪では、フランクフルト歌劇場の音楽チーフなどドイツを中心に活躍する森内剛が務める。

東京二期会
http://www.nikikai.net

https://nikikai.jp/news/20260915301.html
※2027/28シーズン各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。