地元の人たちにかわいがってもらえるオーケストラに
昨年9月にオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のアーティスティック・リーダーに就任した広上淳一がまず取り組んでいるのは、コロナ禍で減ってしまった聴衆を取り戻し、増やしていくということ。彼はそのための努力を惜しまない。昨年9月の就任披露演奏会の途中休憩時にホール内のカフェに出てきて、聴衆と積極的にコミュニケーションを取っていた姿が印象に残っている。現在は、毎月、金沢駅ナカのイタリアン・レストランでOEKの楽団員たちとトーク・コンサート(自ら鍵盤ハーモニカも演奏)を行ったり、地元のテレビやラジオに出演したりもしている。
「演奏会がなくても、毎月、金沢に通っています。地元の人たちにかわいがってもらえるオーケストラにしたいし、仲間を増やしたいと思っています。定期会員も150人増えたと聞きました。今は種まきをしているところで、5年くらいはかかると思います」
2023/24シーズンは9月、OEKコンポーザー・オブ・ザ・イヤーを務める池辺晋一郎の交響曲第11番(シンフォニーⅪ)の世界初演で始まる。
「僕がジュンイチだから11番だって(笑)。そのほか池辺先生のピアノ協奏曲、ストルツマンさんとのモーツァルトのクラリネット協奏曲を予定しています。
大阪、名古屋、広島などへのツアーでは、岩城(宏之)先生が十八番とされていたシチェドリン編曲の『カルメン組曲』を取り上げます。また、若い人を紹介するというコンセプトで葵トリオとベートーヴェンの三重協奏曲を演奏します。
2024年7月のファンタスティック・コンサートは、久石譲の『となりのトトロ』の組曲や、できれば『サンダーバード』など、子どもも大人も楽しめるコンサートにしたいと思っています。
定期公演の指揮者の顔ぶれはできるだけバラエティ豊かにして、僕は年に2回くらいにします。その代わり、小学校や中学校の音楽鑑賞教室を僕が振ることにします。何十公演もやります。石川県内をまわって、オーケストラがなかなか来られないところにはこちらから行きます。出前ですよ。北陸の代表として、新潟、富山、福井にも足を延ばして、北陸でのコンサートも増やしたいですね」
来シーズン、OEKパーマネント・コンダクターの川瀬賢太郎はイギリス音楽特集やドヴォルザークの交響曲を振る。そのほか、マルク・ミンコフスキ、井上道義、ギュンター・ピヒラーら、OEKにポストを持つ指揮者たちも登場。
広上&OEKは、この3月22日に就任後初めて東京でのお披露目演奏会を開催する。シューベルト、モーツァルト、ベートーヴェンという“王道”プログラムである。
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2023年4月号より)
オーケストラ・アンサンブル金沢 第467回 定期公演フィルハーモニー・シリーズ
(指揮:ジャン=クロード・カサドシュ)
2023.4/21(金)19:00 石川県立音楽堂コンサートホール
問:石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632
https://www.oek.jp
東京公演 池辺晋一郎 80歳バースデーコンサート(指揮:広上淳一)
9/15(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
5/19(金)発売
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。